「あ、すみません。」園田円香は慌てて謝罪の言葉を口にした。
「大丈夫です。」
その人の声は特に優しく心地よく、山間の清らかな泉のように耳に滑り込み、聞いていてとても心地よかった。
園田円香は思わず顔を上げて見た。
最初に目に入ったのは、とても小さくて繊細な顔立ちで、髪は豊かでふんわりとして、無造作に肩に垂れ下がり、彼女の雰囲気をより一層際立たせていた。
園田円香は幼い頃から数え切れないほどの美人を見てきた。男性の最高峰には江口侑樹がいて、女性の最高峰には染野早紀がいたが、一目見ただけでこれほど魅了される人は稀だった。この女性は、確かに彼女の目を引いた。
彼女の美しさは染野早紀のような派手で目立つ美しさではなく、清潔で純粋な美しさだった。彼女を見ていると、世界全体が静かになり、時が止まったような錯覚を覚えた。
男性たちが好む初恋の顔というのは、おそらくこういう顔立ちなのだろう。
園田円香は一瞬呆然としたが、すぐに失礼だと気づき、視線を戻し、しゃがんで身分証と航空券を拾い上げ、彼女に差し出しながら、再び謝意を表した。「本当に申し訳ありません。怪我はありませんか?」
「ありません。」
女性は笑顔で首を振り、細い指で耳元の髪をかき上げてから、手を伸ばして身分証と航空券を受け取った。「ありがとうございます、園田さん。」
園田円香は思わず驚いた。
目の前のこの女性のことは知らないはずだ。こんなに美しい人なら、もし知っているか会ったことがあれば、絶対に忘れるはずがない。
でも、どうして自分の姓を知っているのだろう?
「あの、どうして私の姓をご存じなんですか?」
女性の瞳の奥に一瞬戸惑いが浮かんだように見えたが、すぐに消え、自然な様子で答えた。「江川さんと江川夫人が先日派手に結婚を公表されたので、そこで知りました。」
「あぁ...そうですね。」
確かに、彼女と江口侑樹の結婚は、各メディアの一面を連日飾り、何日も続いていたのだ。
女性は再び園田円香に微笑みかけた。「では、失礼します。」
「はい、さようなら。」
女性はスーツケースを引いて、背を向けて去っていった。
園田円香は彼女の歩く姿を見つめていた。その後ろ姿さえも上品で美しく、自分とは違っていた...。幼い頃から大雑把で活発な性格だった自分とは。