第135章 君の手を取り共に老いていく

江口侑樹の瞳の光が沈んでいった。彼は彼女に答えず、腕に力を込めて、園田円香を一気に引き寄せた。

二人の距離が急に縮まり、園田円香は彼の胸元に寄り添うような形になった。

彼女は数秒間呆然としたあと、突然何かに気づいたように、少し慌てて口ごもりながら言った。「江、江口さん...変なことしないでよ!」

彼女だって経験がないわけじゃない。この状況で江口侑樹の意図が分からないはずがなかった。

彼女は両手を男性の胸に当てて、彼を押しのけようとしながら、慌てて付け加えた。「私たち、本当の夫婦じゃないし、できないわ...」

今の二人の関係は、最初よりは良くなっているけど、まだ普通の夫婦関係とは言えないはずだった!

これまでの数回は、他の抗えない要因があったけど、今日は...二人とも完全に正気なのに。

江口侑樹は彼女の言葉を遮って、反問した。「俺たちの結婚証明書は、偽物なのか?」

えっ...

突然の質問に、園田円香の言葉は詰まった。反射的に答える。「本物よ...」

あの記者会見の日、江口侑樹が結婚証明書を公開して、好奇心旺盛なネットユーザーたちが実際に役所で確認したほどだった。江口侑樹と彼女の婚姻は紛れもない事実だった。

「じゃあ、今日の結婚式は偽物か?」

「それも...本物よ...」園田円香は反論できなかった。

「なら、どうして俺たちが本当の夫婦じゃないと言える?」

この三連続の質問に、園田円香は言葉を失った。

「もう質問はないか?」江口侑樹は手を伸ばし、園田円香の細い腰を抱き寄せ、端正な顔を彼女に近づけた。

園田円香はようやく気づいた。江口侑樹が午後に親切にも食事に連れて行って、お腹を満たしてくれた理由を。そうか...食事の代わりに...お返しをしなければならないのね。

今度は彼のお腹を満たす番なのね?

おそらく男性は皆、感情とこういうことを切り離すことができる。感情がなくても欲求があることは問題ない。でも、ほとんどの女性はそれを切り離すことができない。

しかも、前回の良くない経験のせいで、彼女は心理的な拒絶を抑えることができなかった。

園田円香は上半身を後ろに傾けながら、急いで思いついた。「あ、まだ質問があります!」

男性の瞳に邪魔された不快感が閃いたが、結局は我慢して、眉を上げて口を開いた。「何だ?」