園田円香は不思議に思い、無意識に彼の視線の先を追うと、彼が彼女の名前を見つめていることに気づいた……
彼女が面接に合格するとは思っていなかったのだろうか?だから反応できないのか?
「江口さん?」彼女は手を伸ばし、彼の目の前で振った。「急に字が読めなくなったの?それとも私の名前に花が咲いたから、そんなにじっと見つめているの?」
江口侑樹の瞳の奥で光が一瞬きらめき、我に返ると、長い指で彼女の鼻先を軽くつつき、だるそうな声で言った。「さすがに恥をかかせなかったな。よくやった、江川夫人」
珍しく彼の口から褒め言葉が聞けて、園田円香の胸の中にほんの少しの甘さと誇らしさが芽生えた。
江口侑樹は口角を上げ、長い指で彼女の顎を掴んで軽く持ち上げた。彼の端正な顔が近づき、黒い瞳に彼女の小さな姿が映り込んでいた。再び開いた声は少し低くなっていた。「面接に合格して、大会の出場権を手に入れたんだから、功績に応じて褒美をあげないとな?」
功績に応じて褒美?
園田円香は丸い瞳をくるくると回し、確かにそうだと思った。江口侑樹が前もって履歴書の指導をしてくれて、面接のコツも教えてくれて、さらに応援してくれて自信をつけさせてくれなかったら、履歴書の段階で落とされていたかもしれない。
今回の勝利は、二人で勝ち取ったものと言えるだろう。
園田円香は頷き、江口侑樹に向かって姿勢を正し、真摯な表情で口を開いた。「江川さんの指導と励ましに感謝します。それで、褒美は……」
彼女は一瞬言葉を切り、頬を少し赤らめながら、素早く身を乗り出して、彼の頬を両手で包み、唇に軽くキスをした。
触れるか触れないかのような一瞬のキス。
江口侑樹は手を上げ、指先で自分の唇に触れながら、眉を上げて非常に不満そうに言った。「江川夫人、この褒美は、あまりにも吝嗇すぎやしないか?」
「私、江口侑樹の指導は……誰でも受けられるものじゃないんだぞ!」
江口侑樹のこの言葉は傲慢に聞こえたが、園田円香は、彼にはそう言える実力があることを知っていた。彼は幼い頃から非常に賢く、学業成績は誰にも及ばないほどだった。さらに、わずか数年で江川グループの資産を数倍に増やし、各ビジネス誌が競って取材に来るほどで、まさに彼の話を一度聞くことは十年の勉強に匹敵すると言えた。