第178章 負けた味はどう?

坂本波は目の前の二人を見つめ、感慨深げに言った。「円香、安藤さん、これは私が初めて全権を任された大会でしたが、気づかないうちに、もう終盤を迎え、この重要な瞬間にまで来ました。」

「この一ヶ月余り、あなたたち二人が一歩一歩前進し、成長していく姿を見てきて、私はとても嬉しく思います。最終結果がどうであれ、あなたたちの実力は非常に優れていて、これからきっと配信界で輝く新星になることでしょう!」

「さて、それでは、最終結果を発表させていただきます。」

坂本波はゆっくりと封筒を開け、中からカードを取り出し、そこに書かれた名前を見て、わずかに目を揺らめかせた。そして顔を上げ、園田円香を見つめ、「優勝者は…」

一瞬の間を置いて、視線を安藤吉実に向け、大きな声で名前を読み上げた。「安藤吉実さん!」

周囲の人々が一斉に拍手を送り、雷のような拍手喝采が沸き起こった。

同時に、テレビ局の生放送でもこの瞬間が配信され、視聴者たちもこのニュースをリアルタイムで目にした。

誰もが園田円香の優勝を確信していた。彼女の勢いは本当に凄まじかったからだ。まさか最後に安藤吉実という伏兵が現れるとは、誰も予想していなかった。

安藤吉実は微笑みを浮かべ、両手で口を覆い、まるで信じられないといった様子だった。

園田円香の長いまつげが軽く震えたが、それでも笑顔を浮かべ、拍手を送った。

正直なところ、彼女は自分が安藤吉実に劣っているとは思っていなかった。しかし、公平な競争である以上、結果が思い通りでなくても、勝負には潔く従うつもりだった。

ただ…悔しくない、残念に思わないというのは、嘘になるだろう。

結局のところ、江口侑樹に約束したのだ。優勝トロフィーを持ち帰って、お祝いのプレゼントにすると。

さくらテレビの記者たちはすでに安藤吉実を取り囲み、競って取材を始めた。そして園田円香は自然と群衆の後ろへと押しやられていった。

誰もが優勝者の名前だけを覚えていて、二位がどのように去っていったかなど、誰も気にかけない。

園田円香が立ち去ろうとした時、突然肩を叩かれた。振り返ると、意外にも吉田希だった。