第180章 彼女に黙れと言う

彼女のお客さん?

ここに引っ越してきてから、前回佐藤先生を招待した以外、誰も彼女を訪ねてきていなかった。

そもそも彼女には友達も少なく、現在頻繁に連絡を取り合っているのは染野早紀だけだった。もしかして彼女が来たのだろうか?

でもそれはおかしい。染野早紀は秦野慶典が嫌いで、それに伴って秦野慶典の仲間たちも嫌いだった。さらに彼女のせいで、染野早紀は江口侑樹にもあまり好感を持っていない。彼女に会うなら外で約束するはずで、家には来ないはずだ。

誰だろう?

園田円香は考えを巡らせたが思い当たらず、「分かりました。田中さん、私が着替えてすぐ下りますので、それまでお客様の対応をお願いします」と言った。

「かしこまりました、奥様」

園田円香は急いで更衣室に入り、適切な部屋着に着替え、化粧台の前に座って少し身だしなみを整えてから、部屋を出て階下へ向かった。

リビングに入ると、ソファに座っている坂本波の姿が目に入った。彼は田中さんが今しがた運んできた茶を飲んでいた。

園田円香は意外に思った。坂本監督が彼女を探すときは、いつもWeChatか電話だったので、突然の訪問は予想外だった。

彼女は前に進み、坂本波の向かいのソファに座り、笑顔を浮かべながら穏やかに挨拶した。「坂本監督、おはようございます」

坂本波はお茶を置き、同じく笑顔で応じた。「円香さん、おはよう。こんな早くに訪ねてきて、邪魔じゃなかった?」

「大丈夫です」園田円香は言った。「坂本監督がいらっしゃった理由は何でしょうか?」

しかし坂本波はすぐには答えず、静かに尋ねた。「円香さん、まだ朝食は食べていないでしょう?美味しい朝食屋を知っているんだけど、一緒に行きませんか?私の奢りで」

ここまで話が来ると、園田円香は坂本波がこんな早くに家を訪ねてきた理由が分かった気がした。

いいだろう、彼が何を言いたいのか聞いてみよう。

園田円香は頷いた。「はい、いいですよ」

田中さんに一言伝えてから、園田円香は坂本波と一緒に別荘を出た。坂本波は車で来ていたので、彼女は車に乗り込み、車は出発した。

20分後、車は朝食屋の前で止まり、二人は店内に入った。店員は個室へと案内した。

園田円香が座ると、坂本波はメニューを彼女に渡した。「食べたいものを注文してください」