…
オフィスの中。
園田円香は執務机の前に立ち、机の後ろに座っている田中部長を冷静に見つめながら、淡々と口を開いた。「田中部長、私に何かご用でしょうか?」
田中部長は顔を曇らせたまま答えず、冷たく問い返した。「園田円香、今日の外回りで、何をしていた?」
園田円香は眉を僅かに動かし、何かを察したが、それを押し殺して答えた。「今日の外回りは、田中朝一教授を追跡していました。」
「私の前でまだ正直に話さないつもりか!」田中部長は机を強く叩き、声を荒げた。怒りに満ちた声で続けた。「通報を受けたぞ。やっと姿を見せた田中朝一教授を、お前が勝手に逃がしたそうじゃないか?」
やはりそうか。
通報...考えるまでもなく、誰の仕業かわかっていた。
だから先ほど安藤吉実があんな不気味な笑みを浮かべていたのか。
他の人の外回り、自分の外回り、他の人はネタを掘り出そうとしているのに、彼女は違う。まるで目が自分の体に生えているかのように、自分だけを見張っている。
安藤吉実の仕業なら、確実な証拠があるはずだ。園田円香は否定せずに直接口を開いた。「はい、私が田中朝一教授を逃がしました。」
「よくもやったな。ニュースを掘り出しに行かせたのに、自分の仕事を果たさないどころか、他のアナウンサーの仕事まで邪魔をする。どうした?アナウンサーを辞めて、田中朝一教授のボディーガードにでもなりたいのか?」田中部長は激怒していた。
「部長。」園田円香は彼をじっと見つめ、真剣に答えた。「当時、田中朝一教授は全ての記者に囲まれていました。教授が質問に答えたくないのに、一部の記者たちは意図的に彼を怒らせ、刺激し、さらには一方的に罪を着せようとしていました。ただ話題性のある記事を作りたいだけで、真相を究明する気など全くありませんでした。私たちに求められているのは、真相を究明し、それを視聴者に伝えることのはずです。」
「私はそれが私たちの職業倫理に反すると感じました。あの状況では、アナウンサーとしても、一般人としても、田中朝一教授を助けたいと思いました。」