園田円香の心臓が一瞬喉元まで上がってきた。
彼女は唾を飲み込み、バッグから小型のスタンガンを取り出し、しっかりと握りしめて構えた。
この段階で、もし発見されてしまうなら、まずは自分の身を守るしかない。少なくとも捕まってはいけない。
そうでなければ、自分の身の安全が保証されないだけでなく、万が一江口侑樹まで巻き込んでしまったら、それは彼女が最も避けたい結果だった!
ボディーガードの一歩一歩が、彼女の胸を踏みつけているかのようだった。
彼がキャビネットの扉の前まで来たとき、突然、照明が消えた。
ボディーガードはこの予期せぬ出来事に足を止めた。
そして園田円香は、突然伸びてきた手に手首を掴まれ、驚いて思わず抵抗しようとしたが、その手の親指が彼女の手首の内側を軽く二回叩いた。
園田円香のすべての抵抗は消え去った。
彼女はその手の力に従い、素早く配電盤から出ると、その人は即座に彼女の腰を支え、優しく抱き寄せた。
一方、ボディーガードは携帯を取り出し、懐中電灯機能をオンにした。その光が届く直前に、園田円香は抱かれたまま、隣の部屋に滑り込んだ。
一連の動きは速く、的確で、完璧だった!
ボディーガードは配電盤の前まで来て、扉を開け、中を照らしてみたが、何もなかった。
彼は眉をひそめたが、何も発見できず、扉を閉めて立ち去るしかなかった。
…
病室内。
園田円香は男性の胸に寄りかかったまま、まだ心臓が激しく鼓動し、危機を脱したことを実感できずにいた。
頭上から男性の声が聞こえてきた。「大丈夫か?」
馴染みのある声は優しい手のように、彼女の緊張を和らげた。園田円香はゆっくりと顔を上げ、窓から差し込む月明かりの中で、男性の端正な顔立ちが少しずつ目に映った。彼女の声は思わずかすれ気味になった。「どうしてここにいるの?」
これは夢じゃないの?
「おばあちゃんから電話があって、君が家に車を借りに来たと。その後連絡が取れなくなったから、探しに来るしかなかった」江口侑樹は低い声で正直に答えた。
「でも、どうやって私がここにいるって分かったの?」
江口侑樹は軽く笑って、「少し...特権を使ったんだ」
おそらく道路の監視カメラを確認したりしたんでしょう...そうね、時々忘れてしまうけど、彼女の夫は大企業の社長なのだから。