第235章 生きるより死んだ方がマシ

田中お父さんはそこに立ち、園田円香と葉山汐里の「罠にはまる」様子を見て、冷たい笑みを浮かべた。

計略にはまったと分かった後、彼は園田円香と葉山汐里が息子を探しにここに来ることを予測していた。結局のところ、彼は葉山汐里のことをよく知っていた。この女は...息子に一途な想いを寄せているのだから。

園田円香は素早く葉山汐里の手を引いて、逃げようと身を翻したが、彼女たちの後ろには既に五人の屈強なボディーガードが取り囲んでいた。

逃げ場はなかった!

しばらくして、園田円香と葉山汐里はそれぞれボディーガードに押さえられ、長いソファーに座らされた。

園田円香はテーブルの上に残された空き瓶や、灰皿に散らばった吸い殻を見た。空気中にはまだ煙の匂いが残っていた。つまり、田中朝一はずっと家にいて、どこにも行っていないはずだ。

彼女は目を上げて田中お父さんを見つめ、尋ねた。「田中教授はどこですか?」

田中お父さんは彼女の向かいの一人掛けソファーに座り、彼女の質問を聞いて視線を彼女の顔に向けた。軽く笑って、「園田キャスター、今こんな状況で他人のことを気にかける余裕があるんですか?まさか、私の息子が助けに来ると期待しているんですか?」

その時、田中お母さんが階段を降りてきながら言った。「そんな期待は捨てなさい。朝一は今部屋で休んでいるわ。あなたたちを助けに来ることはないわ」

休んでいる...

園田円香の瞳に嘲笑の色が浮かんだ。

どうやら田中教授は何らかの薬剤を注射されたか、睡眠薬を飲まされて、強制的に「休ま」されているようだ!

葉山汐里もそのことに気付き、突然また感情が高ぶった。「教授に何をしたんですか?」

しかしボディーガードたちは彼女を強く押さえつけ、彼女が暴れれば暴れるほど、より強く押さえつけられ痛みを感じた。

園田円香は急いで注意を促した。「葉山さん、落ち着いて。田中教授は彼らの息子だから、何も酷いことはしないはずです。自分を傷つけないで」

その言葉を聞いて、葉山汐里は深く息を吸い、必死に自分を抑えようとした。

田中お父さんは園田円香をじっと見つめ、冷笑した。「園田キャスターは確かに冷静沈着ですね」

正直なところ、彼と園田円香の間には何の恨みも怨みもなく、しかも園田円香は江川家の奥様だった。本来なら彼女と敵対するつもりはなかった。