第245章 私は戻ってくるべきではなかったのか

園田円香は車に乗り込んでから、今日の江口侑樹が運転している車は普段の愛車ではなく、新車だということに気づいた。

彼女はハンドルのマークを見て、普通のフォルクスワーゲンだと分かった。

明らかに江口侑樹の趣味ではない。

彼の車は、スーパーカーか高級車か、ハイエンドのビジネスカーのはずだ……

園田円香は思わず尋ねた。「侑樹さん、これ、あなたの車じゃないよね?」

「うん」

交差点で赤信号になり、江口侑樹はブレーキを踏んでニュートラルに入れ、顔を横に向けて彼女を見た。「僕の車じゃない」

「じゃあ、誰の車なの?あなたの車はどうしたの?」園田円香は困惑した。

江口侑樹は答えずに、謎めいた様子で「当ててみて」と言った。

江口侑樹の友人たちは皆、裕福か身分の高い人ばかりで、こんな車に乗るはずがない。会社の社用車か、安藤秘書の車かもしれない。

彼女は正直に答えた。

青信号に変わり、江口侑樹はギアを入れ、アクセルを踏んだ。真剣に運転しながら、のんびりと言った。「どれも違う。もう一度当ててみて」

これは本当に、当てるのが難しい。

園田円香は口を尖らせ、適当に言った。「まさか私の車ってことはないでしょう」

江口侑樹は再び彼女を見て、目に笑みを浮かべながら「うん、正解」と言った。

「……??」園田円香は呆然とした。

適当に言っただけなのに、自分の車になってしまった?

彼女は30秒かけて消化した。「どういうこと?」

「プレゼントだよ」

江口侑樹の言葉と共に、車はレストランの入り口に到着した。彼は車を停め、園田円香の手を取り、車のキーを彼女の手のひらに置いた。

園田円香は目を伏せ、呆然とそのキーを見つめた。「どうして突然、私に車をプレゼントするの?」

「今日、君の二つ目の夢が叶った。夫として、何かしなければならないだろう」

江口侑樹は大きな手で彼女の頬を優しく撫で、心地よい声で言った。「君が贅沢や派手なものを好まないことは知っている。だから普通の車を選んだ。通勤にも外回りにも便利だろう」

実は園田円香も車を買うことを考えていた。この仕事では車があった方が便利だからだ。でも今の貯金では足りないので、もう少し待つつもりだった。

しかし、江口侑樹が既に彼女のことを考えて、しかも彼女のニーズに合わせて普通の車種を選んでくれていたとは思わなかった。