第244話 致命的な弱点

彼女は携帯を手に取り、着信を確認すると、ちょうど江口侑樹からの電話だった。眉を緩ませて笑みを浮かべながら電話に出ると、嬉しそうな声で言った。「ちょうどあなたに電話しようと思っていたところなのに、先に電話をくれるなんて、心が通じ合ってるわね」

向こうから男性の低くて心地よい笑い声が聞こえ、園田円香の心臓がドキドキした。

常に魅力を放つ男性だった。

江口侑樹が口を開いた。「どこにいるの?病院?」

彼女が今日、安藤秘書のお見舞いに鶏スープを持って行くと言っていたからだ。

「いいえ、今さくらテレビにいるの」

江口侑樹:「へぇ?退職手続きに?」

さすが賢い人と話すのは楽だ。

園田円香はうんと返事をし、続けて言った。「それと、安藤吉実をボコボコにしてきたの。八回投げ飛ばして、両腕と顎を外してやったわ」

彼女は細かいところまで説明した。

向こうは一瞬沈黙した後、淡々と「ふうん」と返した。

この反応は……

園田円香は軽く眉を上げ、わざと尋ねた。「心配になった?だって安藤吉実はあなたの幼なじみでしょう」

今度は江口侑樹の返事が早かった。「うん、心配だよ」

「………………」園田円香の息が一瞬止まった。

次の瞬間、男性の声が再び聞こえた。「手は痛くなかった?」

園田円香の宙に浮いていた心臓が、急に元の位置に戻った。

江口侑樹が心配していたのは彼女の手のことで、安藤吉実のことではなかったのだ。

園田円香はやっと再び嬉しくなり、笑いながら言った。「さっき後藤先生が私を自分のチームに誘ってくれたの。私、承諾したわ。これからは後藤先生の人になるの!」

「おめでとう。また一つ夢が叶ったね」江口侑樹も彼女のために喜んだ。彼女の笑い声を聞いているだけで、自然と幸せな気持ちになった。

園田円香は小さな顎を少し上げ、誇らしげに言った。「じゃあ今日、特別にあなたに私を食事に誘うチャンスをあげる」

江口侑樹は素直に答えた。「光栄です。入口で待っていて、今迎えに行くから」

「うん」

電話を切った後、園田円香は甘く微笑み、近くのコンビニの前に歩いて行き、外に置いてある椅子に座って、スマホを見ながら待っていた。

安藤吉実はトイレに行き、個室に隠れて自分の身なりの乱れを整えていた。

外では、社員たちが入ってきて、化粧直しをしながらゴシップを話していた。