園田円香はもはや驚かなかった。後藤先生がここまでの地位に上り詰めたのは、人を見る目があるからに違いない。
彼女は頷いて答えた。「はい、退職手続きをしに行かなければなりません。」
彼女は情熱を持ってさくらテレビに入社し、ずっと夢見ていた場所で働き始めたが、何度も失望を味わうことになった。
上司も、同僚も、局の問題処理の仕方も、すべて彼女の価値観や理念とは合わなかった。
彼女にとって、キャスターは単なる仕事ではなく、志でもあった。ここに留まれば、この環境に同化されるか、また同じような問題が起きるかのどちらかだった。
それならば、いっそ去る方がいい。
後藤淑子は微笑んで言った。「私が若かった頃と同じ気性ね。経験も似ているわ。」
「後藤先生……あなたも……さくらテレビを辞めようとしたことが?」園田円香は驚きの色を見せた。
彼女は後藤先生のファンとして、その経歴を暗記していた。ずっとさくらテレビにいて、一度も辞めたことはなかったはずだ。
「何度もよ。」後藤淑子は訂正した。
「……な、なぜですか?」
後藤淑子は軽く笑って言った。「理念の違いよ。あの老人たちのやり方も気に入らなかった。」
彼女が言う老人たちとは、局の幹部たちのことだった。
問題が起きるたびに、彼らは駒を捨てて車を守ることしか考えず、いつも他人に責任を押し付け、自分たちは潔白を装う。局の利益に関係なければ、何でもやりかねない連中だった。
彼女の率直な物言いに、園田円香も率直に尋ねた。「あ……では、なぜ……まだここにいるんですか?」
「局が私を手放したくなかったからよ。だから、私の条件を受け入れざるを得なかった。自分のチームを作らせてもらったの。」
後藤淑子は事務所の床から天井までの窓を通して外のオフィスを見つめながら言った。「ここのキャスターと記者たちは、私にだけ従う。私のチームはさくらテレビのキャスターチームとは完全に分かれていて、私の部下は私にだけ責任を負えばいい。もちろん、最大限の自由も与えるし、何か問題が起きても、キャスター本人が法律や道徳の底線を越えていない限り、私が最後まで守り抜く!」
「今、私のチームには5人いるわ。外にいる2人と、取材に出ている3人。任務があれば外に出られるし、9時から5時までの打刻も必要ない。」