江口侑樹は彼女を少し冗談で慰めようとしただけだったが、彼女のこのような反応に少し驚いた。
彼は少し顔を上げ、頬を赤らめた園田円香を見つめながら、眉を軽く上げ、声が一層低くなった。「本当に?」
普段からこんなに「紳士的」な彼を見ていた。
園田円香はまだ何も言わず、今度は手を上げて江口侑樹の首に腕を回し、首を伸ばして彼の薄い唇にキスをした。
言葉での返事として、彼女は確信していた!
江口侑樹の瞳に笑みが浮かび、温かい指先で彼女の唇を優しく撫で、低い声で言った。「途中で止めるなよ。」
そう言うと、彼は主導権を握り、薄い唇を彼女の額から目、鼻、そして唇へと移していった。
彼のキスは軽やかで、まるで失って取り戻した宝物を扱うかのようだった。
この瞬間、彼は感じていた。園田円香が本当に...彼を心の中に入れることを許してくれたのだと。彼はついに...彼女の心の扉の外をさまよう存在ではなくなったのだと。
男のキスは優しく、また情熱的で、以前とは少し違っていた。欲望とも違う何かで、園田円香の頭を混乱させ、心臓の鼓動を早め、頬をより一層熱くさせた。
そして彼女も、思わず彼に応えていた。
江口侑樹はそれに気づき、軽く笑い、軽いキスだけでは満足できなくなり、腕で彼女をきつく抱きしめ、キスも優しさから激しさへと変わっていった。
一夜の艶めかしさ。
...
翌日、園田円香はまた腰の痛みを感じながら起き上がった。
やはり深夜の言葉は考えなしだった。昨夜はおとなしく寝るべきだった。なぜ江口侑樹を誘惑するような真似をしたのだろう。
でも今日は安藤秘書にチキンスープを持っていく約束をしているから、もう寝ていられない。
園田円香は浴室に行き、温かいお風呂に浸かって気分が落ち着いてから、シャーククリップで髪を適当にまとめ、ゆったりとした部屋着に着替えて階下に降りた。
江川おばあさんと田中は友達とお茶を飲みに行っていたが、園田円香のためにお昼ご飯を残してくれていた。
園田円香はまず食材を洗って鍋に入れて煮込み始め、その間にお昼ご飯を温め、食べながらSNSを見た。
SNS上の世論は、完全に様変わりしていた。
昨日まで彼女は叩かれる存在だったのに、今日は正義の味方になっていた。