第250章 彼が消えた

園田円香は三度目に江口侑樹に電話をかけましたが、冷たい機械音が響きました:「お客様のお掛けになった電話の電源が切れています」。

彼女は少し予想外でした。

彼女と江口侑樹が新たな出発をして、真面目に生活していくことを決めてから、江口侑樹が彼女の電話に出ないことは滅多にありませんでした。仕事で本当に忙しい時以外は必ず出ていましたし、まして最初の電話に出ず、二度目を拒否し、三度目には電源を切るなんてことは全くありませんでした。

彼は何のつもり?

まさか、本当に安藤吉実と一緒に特別な日を過ごしているから、電話に出ないの?

園田円香は携帯を強く握りしめ、指先が白くなっていきました。

眠気は完全に覚め、布団にくるまったまま起き上がりました。

わずか0.5秒の躊躇の後、布団をはね除けてベッドから降り、クローゼットへ向かい、素早くゆったりとしたパーカーとショートパンツに着替え、バッグを背負って出かけました。

この時間、江川おばあさんと田中はもう休んでいました。園田円香は心の中は焦っていましたが、階段を降りる時は足音を軽くして、彼女たちを起こさないようにしました。

外に出ると、江口侑樹が彼女にプレゼントした白い車に乗り込み、エンジンをかけ、アクセルを踏むと車は急発進しました。

道路は車が極めて少なく、園田円香はほぼずっとアクセルを踏んで疾走し、道は終始スムーズで、30分余りで江川グループに到着しました。

彼女は車の中に座ったまま、しばらく降りませんでした。

静かで人気のない正面玄関をじっと見つめながら、下唇を噛み、非常に複雑な眼差しを向けていました。

時として、人は物事を曖昧にしておいた方がいいのか、はっきりさせた方がいいのか?

この問題は、本当に永遠の難題の一つでした。

以前なら...彼女はおそらく逃避を選び、曖昧なままでいることを選んだでしょう。

でも今は、何も知らない、何も見えないふりをすることはできません。

2年前、彼女は突然の婚約破棄で見捨てられ、理由も分からないまま、不安と自己嫌悪、様々な憶測の中で、とても苦しい時期を過ごしました。

肉に刺さった針は命に関わりませんが、抜けば痛い、でも抜かなければずっと痛みが続きます。