第251章 全部白状了

そこまで話して、安藤秘書は何かに気づいたように急に言葉を切り、「あ」と声を上げ、強引に話題を変えた。「特別な日なんてないはずですよ。江川社長からも何も聞いてませんし……」

そう言いながら、リンゴを手に取り、力強く二口かじって、不自然さを隠すように必死に咀嚼し続けた。

園田円香は黙ったまま、黒くて美しい瞳でじっと彼を見つめていた。

その視線があまりにも圧迫感があり、安藤秘書は黙って顔を別の方向に向け、園田円香の視線から逃れようとした。

しかし……背を向けていても、その鋭い視線が背中に突き刺さるのを感じた。

まるで先ほどの夢の中で、教務主任にじっと見つめられていた時のような感覚で、冷や汗が止まらなかった。

およそ30秒後、園田円香はようやく口を開いたが、追及するのではなく、何気なく尋ねた。「リンゴ、美味しい?」

リンゴを芯だけ残して食べ終えた安藤秘書は力強くうなずいた。「美味しいです」

「美味しいなら、もう一つ剥いてあげましょうか」

園田円香は手近にあったリンゴを取り、フルーツナイフで皮を剥き始めた。

「い、いえ、そんな面倒な……」安藤秘書が言いながら振り返ると、思わず体が震えた。

最初のリンゴは普通に剥いていたのに、今度のは剥くというより切り刻んでいた。

一刀一刀下ろすたびに果肉が落ちていく。

その手際よい包丁さばきと構えを見て、安藤秘書は妙に、次の瞬間には自分に向かって刃が振り下ろされるのではないかと感じた。

前回の冷静な暴走運転を目撃して以来、彼はもう奥様を軽く見ることはできなくなっていた。

園田円香は皮を剥き終えると、やっと目を上げて安藤秘書を見た。唇の端を少し上げ、「二つに切ってあげましょう」

言い終わるや否や、まばたきひとつせずに一刀両断。果肉が二つに割れた。

安藤秘書は思わず唾を飲み込み、無意識に自分の首筋に触れた。これは本当に……怖すぎる!

園田円香がリンゴを差し出す。

安藤秘書は震える両手でそれを受け取った。

園田円香は更に笑みを浮かべて言った。「安藤秘書、私は今日は仕事がないので、一日中暇なの。ここであなたに付き添わせてもらうわ」

「……」安藤秘書の手が震え、リンゴを落としてしまい、布団の上に落ちた。「い、いえ、一人で大丈夫です」

彼の表情は完全に困り果てていた。