第256話 証明してあげられる

園田円香は指を少し止めてから、そのメッセージを開いた。

安藤吉実:【言葉だけでは証拠にならないことは分かっています。今夜、証明してお見せしましょう。】

彼女はそれを読み終えると、無表情でWeChatを閉じ、スマートフォンの画面を消した。

園田円香はエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。エレベーターが上昇する中、彼女は上を見上げ、数字が変わっていくのを見つめながら、軽く下唇を噛んだ。

到着後、園田円香はエレベーターを出て、右側のオフィスフロアへと向かった。ここは後藤先生のチームのエリアだった。

中に入ると、受付の女性が挨拶をした。「園田キャスター、こんにちは。」

聞き覚えのある声に、園田円香が顔を上げると、なんと野村丸美だった。最初は驚いたものの、すぐに笑顔を浮かべた。「野村さん、どうしてここに?」

彼女は元々キャスター部の秘書だった。

野村丸美は目尻を下げて笑いながら答えた。「田中さんが妊娠して産休を取られたので、局が一時的に私を異動させて、彼女の代わりを務めることになったんです。」

「そうなんですね...」園田円香は野村丸美のことが好きだったので、自然と嬉しくなった。「これからもよろしくお願いします。」

「とんでもございません。」野村丸美は手を振った。「園田キャスターこそ、よろしくお願いします。」

少し言葉を交わした後、野村丸美は続けた。「園田キャスター、後藤先生から指示がありまして、引き継ぎは済ませてあります。こちらが資料になりますので、ご確認の上、サインをお願いします。」

そう言って、書類を園田円香に差し出した。

「ありがとうございます。」園田円香は受け取りながら尋ねた。「他に何かありますか?」

野村丸美は答えた。「後藤先生が、報告が終わったら彼女のオフィスに来るようにとおっしゃっていました。」

「はい。」

園田円香は自分のデスクに向かった。デスクの上には既に彼女の名札と必要な事務用品が置かれており、おそらく野村丸美が事前に用意してくれたのだろう。

彼女はバッグを置いて座り、まず入社書類に目を通し、問題がないことを確認してから署名をし、それから後藤先生のオフィスへ向かった。