染野早紀がそう尋ねたのは、彼女も妊娠したことがあり、当時つわりの症状がとても強く、すぐに吐き気を催し、めまいがひどかったからだ。
今、園田円香の様子を見ていると、彼女のつわりの時と全く同じように見えた。
妊娠?
その二文字が耳に入った瞬間、園田円香の元々青ざめていた顔から、さらに血の気が引いた。
彼女は目を見開き、信じられない様子で染野早紀を見つめ、かすれた声で「あ...あなた、何て言ったの?」と言った。
彼女の目に喜びの色が全くなく、むしろ絶望と動揺の色が満ちているのを見て、染野早紀は眉間にしわを寄せた。
園田円香が妊活していることは知っていた。この間、電話やLINEで話していた時、江口侑樹との可愛い子供が欲しいと言っていて、どんな子供になるか色々と想像までしていたのだ。
しかし今、彼女はこんな反応を示している...
今夜の園田円香のこんな惨めな状態も、きっとあの江口侑樹という男のせいに違いない!
園田円香を刺激したくない染野早紀は、下唇を軽く噛み、慎重に言った。「私も推測だけど、円香、病院に行って、検査すれば分かるわ。」
病院に行く...
園田円香の耳に、さっき茶室の個室で安藤吉実が言った言葉が蘇った。彼女は染野早紀の手を掴み、無意識に強く握りしめ、断固として「病院には行かない」と言った。
「でも...こういうことは、はっきりさせた方がいいわ...」染野早紀は同意しなかった。
結局これは彼女の身体のことだし、もし本当に妊娠していたら、こんな精神状態では彼女にも赤ちゃんにも良くない。
「病院には行けない!」園田円香は一字一句はっきりと繰り返した。
妊娠していなければ、それでいい。
でももし本当に妊娠していたら、病院に行って結果が出れば、江口侑樹は必ず知ることになる。
行けない。
染野早紀はこの三文字に込められた違和感を鋭く察知した。彼女は口を開きかけたが、園田円香のよろめく様子を見て、結局疑問は全て飲み込んだ。
彼女は園田円香の手を握り返し、優しく言った。「わかったわ。あなたの言う通り、病院には行かないわ。」
少し間を置いて、また「じゃあ今から...」と言いかけた。
言い終わる前に、園田円香が先に「あなたのマンションに行きましょう」と答えた。
染野早紀は頷いた。「いいわ、私の家に行きましょう。」