角を曲がって、個室に戻ろうとしていた。
しかし、彼女の心は不意に震え、足を止めた。次の瞬間、反対側から徐々に近づいてくる人影が見えた。
まだ距離があり、廊下の灯りは黄色く薄暗く、人影の輪郭しか見えなかったが。
それでも一目で分かった。江口侑樹だった。
園田円香は突然立っていられなくなり、よろめいて数歩後ずさりした。幸い、壁を手で支えることができ、転ばずに済んだ。
さっきまで安藤吉実に、江口侑樹は来ないと言っていたのに。
今、まさに痛烈な平手打ちを顔に受けたかのように、一瞬頭が真っ白になった。
個室のドアが突然開き、安藤吉実が出てきた。
園田円香は顔が真っ青で、彼らに見られるわけにはいかなかった。壁に身を寄せ、自分の姿を隠した。
江口侑樹が個室の入り口まで来ると、安藤吉実は彼を見上げ、甘い笑顔を浮かべた。
江口侑樹は彼女の方に横向きだったため、園田円香には彼の表情がよく見えなかったが、彼が拒絶や疎遠な様子を見せている感じはなかった。
江口侑樹は頭を下げ、安藤吉実は目を上げ、二人は会話を交わしていた。
二人が何を話しているのかは聞こえなかったが、目の前の光景は...特に彼女の神経を刺激した。
安藤吉実は一本の電話で彼を自分の元に呼び寄せることができた。
しかも彼が家で彼女を待っていると言った状況で。
これが彼の言う、ただの知り合いの友人なのだろうか?
しかし園田円香はまだ最後の理性を保っていた。江口侑樹に最後のチャンスを与えることができる、最後にもう一度信じることができる。
彼女を失望させないことを願った。
園田円香は深く息を吸い、震える手を抑えながら、バッグから携帯電話を取り出し、江口侑樹に電話をかけた。
彼女の視線は、ずっと江口侑樹に釘付けになっていた。
個室の入り口で、江口侑樹の携帯電話が鳴り、彼らの会話を中断させた。
園田円香は、男性がズボンのポケットから携帯電話を取り出し、画面を見下ろし、一秒間止まるのを見ていた。
そして、彼の指が画面上をスライドした。
園田円香は電話から冷たい案内音声を聞いた:お客様のお電話はつながりませんでした...
彼女の電話は、拒否されたのだ。
園田円香の携帯電話を握る手が力なく落ちた。
あの夜と、まったく同じだった。
そうか、こういうことだったのか...