第296章 離婚した

園田円香は手を上げ、目尻を強く拭いながら、掠れた声で言った。「後悔することなんて何もないわ」

そう言うと、彼女はペンを置き、二通の契約書を安藤秘書の前に押し出した。「持って行って」

安藤秘書は契約書に視線を落としたが、すぐには手に取らず、深いため息をつきながら、非常に残念そうな口調で言った。「園田さん、本当に江川社長とこのような結果になってしまうとは思いもしませんでした。本当に世の中何が起こるか分かりませんね」

元々、二人は互いを恨み、傷つけ合い、そして少しずつ様々な出来事を経験して、心を開き始め、過去を受け入れ始め、愛し合うようになり、子供まで授かったのに。

しかし...突然の不幸で、子供を失い、二人の関係も崩れ、今では離婚することになった。

安藤秘書の目尻も赤くなってきた。

二人の別れを見るのは、自分が失恋するよりも辛かった。

彼は身を屈めて二通の契約書を手に取り、書類カバンに入れ、園田円香に向かって軽く一礼をして、真摯に言った。「園田さん、これまでのご厚意に感謝いたします。今後何かございましたら、いつでもご連絡ください。私にできることは、決して断りません」

「どうか毎日お幸せで、充実した日々をお過ごしください」

話しているうちに、涙が落ちそうになり、少し恥ずかしくなって、眼鏡を外して涙を拭った。

園田円香はそれを見て、思わず温かい笑顔を見せた。「ありがとう。そうするわ」

彼女はティッシュを一枚取り、彼に差し出した。「もう泣かないで」

彼女と江口侑樹の間にどんな恩讐があろうとも、江川おばあさん、安藤秘書、田中は、皆彼女に心から接してくれた。彼女も彼らに感謝していた。

染野早紀は軽く眉を上げた。

この安藤秘書は、江口侑樹というクソ男とは全然違って、なかなかいい人じゃない。

彼女は口を開いた。「安藤秘書、前にあんな風にあなたを責めてごめんなさい。あなたの是非をわきまえる姿勢、私、好きよ!」

少し間を置いて、自分の名刺を取り出して彼に差し出した。「そのクソ男のところを辞めて、私のところに来ない?給料は倍出すわ」

しかし安藤秘書は驚いて手を振り、言葉も詰まりながら、「秦野夫人、私は、私は江川社長のところで十分、十分満足しています。ご好意は感謝いたしますが、私は、私は先に失礼します」