道中、安藤吉実は左右に車を蛇行させ、何度も他の車と衝突しそうになり、クラクションを鳴らされ続けたが、彼女は一切気にしなかった。
他人なんて、自分の用事に比べたら大したことじゃない!
数え切れないほどの信号無視を重ね、何とか55分後に空港に到着し、下車するや否や足を止めることなく中へと駆け込んだ。
ジェームズ博士が教えてくれたカフェに入ると、息を整える暇もなく、辺りを見渡した。
広々としたカフェの中は、がらんとしていて人影も少なく、角の窓際の席に座る二人の姿がすぐに目に入った。
安藤吉実の目が鋭く光った。
そこにいたのはジェームズ博士と琳ではなく……園田円香と染野早紀だった。
安藤吉実は諦めきれず、もう一度店内を見回したが、やはりジェームズ博士の姿は見当たらなかった。
もしかして、また園田円香が何か細工をしたのか?
そう考えながら、大股で二人の前まで歩み寄り、立ち止まって、すぐさま尋ねた。「園田円香、ジェームズ博士はどこ?」
園田円香はゆっくりとホットミルクを一口飲み、まぶたを持ち上げ、唇を動かして二文字だけ告げた。「帰った」
「……まさか?」
一時間以内に駆けつけたのに、ジェームズ博士が待ってくれないはずがない。
突然何かを思い出したように、安藤吉実は園田円香を怒りの目で睨みつけ、詰問した。「あなたがジェームズ博士を帰らせたんでしょう?私の体調が良くなるのが怖くて、自分は侑樹の子供を産めないから、私の道も断とうとしたんでしょう!」
園田円香はそれを聞いて、笑みを浮かべた。
安藤吉実はさらに怒りを募らせ、「認めたってこと?」
「ジェームズ博士が帰るか帰らないかは、彼自身の判断よ」園田円香はゆっくりと言葉を紡いだ。「あなたの道を断ったのは、私じゃない。それは……あなた自身よ!」
「どういう意味?私自身って?」安藤吉実は疑わしげに彼女を見つめた。「もういい加減にしてよ」
園田円香は口角を歪め、容赦なく嘲笑した。「安藤吉実、私もあなたを少しは見くびっていたわ。こんな状況になっても、まだ分からないなんて。馬鹿だとは思っていたけど、こんなに救いようがないとは思わなかったわ!」
「園田円香!」