第298章 彼女は自分を許さない

「ジェームズ博士と彼の助手の琳です」

園田円香は箱を閉じながら言った。「だから、もう安心できるでしょう?」

この答えは染野早紀の予想外で、思わず「わぁ」と声を上げてしまった。

「ちょっと待って、これはどういうこと?」染野早紀は園田円香をじっと見つめ、好奇心いっぱいに尋ねた。「ジェームズ博士って、あの最低な江口侑樹が呼んできたんじゃないの?離婚したのに、どうして博士はまだあなたの面倒を見てくれるの?」

園田円香は頷いた。「確かに江口侑樹が呼んできたけど…」

彼女は一瞬間を置いて、続けた。「私は既に誰かにジェームズ博士に話を通してもらっていたの」

ジェームズ博士が最終的に彼女の治療に来ることを承諾したのは、半分は江口侑樹が提示した条件に心を動かされたからだが、もう半分の理由は佐藤先生だった。

「誰がそんなすごい人脈を持ってるの?ジェームズ博士に話を通せるなんて?」染野早紀は思わず口にしたが、園田円香が答える前に、突然思い当たって言った。「あの…佐藤先生?」

「うん、すごく賢いじゃない!」園田円香は冗談めかしてサムズアップした。

「そんな難しくないわよ。あなたの知り合いなんて、指で数えられるくらいしかいないんだから」染野早紀は不機嫌そうに返した。

彼女は黒い瞳をくるくると回し、瞳の奥に好奇心の光を宿しながら、さらに詮索するように尋ねた。「じゃあ、佐藤先生はどうやってジェームズ博士を説得したの?」

「実は偶然なんだけど、ジェームズ博士は佐藤先生の叔父さんなの」

「...マジで?」染野早紀は思わず声を上げた。「佐藤先生、私の想像以上だわ。これって完全な医学の名門じゃない?」

彼自身、若くして心臓外科の名医となり、叔父は婦人科の権威。他の家族も医学界の様々な分野に関わっているかもしれない。

まさに輝かしい逸材じゃない!

彼女は肘で園田円香の腕を軽くつついて、意味ありげに笑いながら聞いた。「佐藤先生って独身?」

「…………」

染野早紀は園田円香の無言を無視して、さらに追及した。「前から佐藤先生があなたに気があるって思ってたけど、今となってはもう確実よ!」

ジェームズ博士の時間はとても貴重なのに、数ヶ月もかけて園田円香の世話をすることを承諾するなんて、どれだけの面子が必要だったことか!