第315章 私にチャンスをください

本当に……久しぶりに聞いた名前だった。

園田円香は淡々とした目つきで、感情の起伏もなく、平坦な口調で答えた。「そうですか?知りませんでした。」

この三年間、周りの人々は彼女の前で江口侑樹の名前や彼に関することを避けてきた。そして彼女自身も、彼に関する情報を一切追っていなかった。

まるで、この世界から彼という人物が消えてしまったかのようだった。

そして、彼のことに関して、本当に少しの興味も持っていなかった。

佐藤先生は普段から人を追い詰めることはなく、紳士的で、相手の気持ちを思いやる人だった。話題が不適切だと感じれば、すぐに止めるタイプだった。

明らかに園田円香はこの話題を続けたくないようだったが、彼はそれを無視するかのように続けた。「じゃあ、今知ったわけだけど、どう感じる?」

園田円香は眉間にしわを寄せた。

彼女は振り向いて佐藤先生の目を見つめ、口を開いた。「何も感じません。彼が再婚しようと、離婚しようと、また結婚しようと、私には関係ありません。」

彼が彼女の命を狙った瞬間から、この男は彼女の心の中で既に死んでいた。

今の江口侑樹は、彼女にとってこれ以上ない他人でしかなかった。

佐藤先生は園田円香の表情を観察した。彼女は本当に落ち着いていて、まるで今日の天気や食事の話をしているかのような平静さだった。

どうやら、彼女は本当に乗り越えたようだった。

正直に言えば、彼はとても嬉しかった。いや、むしろ大喜びだった。

佐藤先生は穏やかな笑みを浮かべ、少しも申し訳なさそうでもない謝罪の言葉を口にした。「すみません、ただ確認したかっただけです。」

園田円香:「……」

彼女には分かっていた。彼がこんな質問を突然するはずがない。だから……彼女は口を開き、先に言った。「佐藤先生、私は……」

しかし、佐藤先生は彼女が何を言おうとしているか分かっていたので、その機会を与えなかった。彼は彼女の言葉を遮って言った。「円香さん、まず……私に話させてください。」

彼女が先に話してしまえば、自分の心の内を話すことができなくなるだろう。

佐藤先生は深く息を吸い、緊張した気持ちを落ち着かせてから、笑顔で言った。「円香さん、唐突かもしれませんが……」