第320章 私は待っています、必ず会いましょう

電話が数回鳴ると、向こうが応答し、佐藤先生の優しい声が聞こえてきた。「円香、おはよう」

彼女が電話をかけるたびに、彼はほぼ即座に出るようだった。

園田円香は唇の端にかすかな笑みを浮かべ、「おはよう」と返した。

「こんな早くに電話をくれて、何かあったの？」佐藤先生は心配そうに尋ねた。「智則に何かあったんじゃないよね？」

まるで彼こそが智則の実の父親であるかのように、智則が生まれてから今まで、彼の心配と気遣いは一度も途切れたことがなかった。

園田円香は以前気づかなかったし、考えもしなかったが、今少し注意を向けてみると、佐藤先生が彼女と智則のためにしてくれたことは数え切れないほどだった。

それは本来、彼女の夫であり、智則の実の父親がすべきことだったのに。

昨夜、自分は少し自己中心的だったのではないかと考えていたが、今では完全に自己中心的だったと感じている。

彼女は智則を手元に置くことを決めたが、彼に完全な家庭を与えることは考えていなかった。自分一人で智則に完全な愛を与えられると思っていた。

しかし、彼女の考えを子供に押し付けることはできない。

自分のことを考えてみても、両親があんなにひどく、自分に対してあんなに冷たかったのに、それでも一時期は幻想を抱き、彼らの愛を求めていたではないか？

己の欲せざるところ、人に施すことなかれ。

園田円香は密かに深く息を吸い、胸の中で沸き立つ感情を抑え込んで、淡々と言った。「智則は何ともないわ、心配しないで」

「あの...昨日、あなたと智則が空港で...江口侑樹に会った件について聞きたいんだけど」

彼女の質問が直接的すぎて、佐藤先生は心の準備ができておらず、一時言葉に詰まった。

園田円香は続けて言った。「だいたい察しがついたわ。嘘をついて隠そうとしないで」

数秒後、佐藤先生は向こうで苦笑いを漏らした。「円香さん、時々あなたが賢すぎるのは、本当に困ったものだね」

わずかな手がかりから、彼女は違和感を察知できてしまう。

佐藤先生もやむを得ず事実を話した。「わざと隠していたわけじゃないんです。ただ心配させたくなくて...実は...」

彼は昨日の状況を説明した。

「つまり、江口侑樹は何も疑っていないということ？」