第324章 帰国した

園田円香が持っていたのは宝石箱で、中には彼が彼女にくれた指輪が入っていた。

今、彼女はこれを彼に返そうとしている……

つまり、彼女はまだ江口侑樹のことを考えているのか、彼は正式に断られたということか?

「円香……」佐藤先生は受け取らず、声は暗く沈んでいた。

園田円香は彼の表情を見て、誤解していることを悟った。彼女は軽く笑い、特に説明もせずに直接言った。「佐藤先生、私が帰ってきたら、あなたが直接つけてくださいね!」

この一言で十分だった。

案の定、佐藤先生は一瞬驚いた後、瞳の中に笑みが少しずつ浮かび上がってきた。彼は手を上げて宝石箱を受け取り、極めて優しい声で「うん」と答えた。

彼の言葉が落ちると同時に、突然一歩前に出て、両腕を広げ、園田円香を抱きしめた。腕で彼女をしっかりと抱きしめた。

園田円香の体は反射的にわずかに不自然になったが、すぐに自分をリラックスさせ、彼を押しのけることはなかった。

佐藤先生は抱擁でさえも紳士的で、たった十数秒で彼女を離し、その後笑って言った。「気をつけて」

「はい」園田円香は名残惜しそうに園田智則と佐藤先生を見つめ、「じゃあ、行ってきます」

佐藤先生は少し身を屈めて園田智則を抱き上げ、大人と子供が揃って彼女を見つめた。園田智則は名残惜しそうな表情で叫んだ。「ママ、早く帰ってきてね!」

「智則、いい子にしていてね。ママ行くわよ!」

園田円香は彼らに向かって力いっぱい手を振り、それから自分を強制的に振り向かせ、大きな歩幅で改札を通った。

一歩でも遅くなったり、ぐずぐずしたりすれば、もう離れられなくなりそうだった。

飛行機が離陸した。

園田円香は窓の外の雲を眺めながら、この光景が3年前に逆戻りしたかのように感じた。

当時は決然とした気持ちで去り、二度と戻るつもりはなかった。しかし、世の中の出来事は予測不可能で、しかも、思い通りにはならなかった。

彼女はただ、今回が杞憂に終わることを願っていた。

早く事を済ませて、早く帰って、智則とは二度と離れ離れにならないように。そして、佐藤先生とも……本当に新しい家庭を築けるかもしれない。

東京、江川慈善団体。