第348章 全てが消えた

園田円香も彼をじっと見つめ、指先で毒針を握りしめながら、心の中で「さようなら」と言った。

もし時間を巻き戻せるなら、絶対に江口侑樹を好きにはならなかっただろう。彼に最初に拒絶された時点で、きっぱりと諦めていただろう。

もし巻き戻せないなら、来世があるとしても、もう二度と彼に会いたくない、二度と顔を合わせたくない。

黄泉道でさえも、出会いたくなかった。

園田円香は江口侑樹の指が曲がり始めるのを見つめ、彼の首筋に視線を移した。彼が引き金を引く瞬間、彼女も毒針を彼の体内に突き刺すつもりだった。

共倒れだ。

しかし千載一遇のその時、教会の扉が再び勢いよく開かれ、か細いながらも力強い声が響き渡った。

「私の孫嫁に手を出す者があれば許さないぞ!」

全員が反射的に声のする方を振り向くと、江川おばあさんが蒼白な顔で車椅子に座り、田中に押されて入ってくるところだった。

彼らは咄嗟に阻止しようとしたが、江川おばあさんの後ろには訓練された警護員たちが押し寄せ、整然と彼女を守り、対峙する状況となった。

警護員たちは互いを見つめ合い、皆顔見知りだった。

彼らは全員江川家の者だが、江川おばあさんの警護員は一派で、江口侑樹の警護員は別の一派だった。

上下関係はなく、ただ忠誠を誓う主が異なるだけだった。

江川おばあさんの一派は、以前は江川お爺さんが統制していたもので、本来なら江口侑樹が継承するはずだった。江口侑樹の配下とも言えたが、おばあさんがまだ存命で、多くの権限が江口侑樹に移譲されていなかったため、彼女にはまだ彼らを統制する力があった。

安藤秘書は江川おばあさんの出現に驚いた。危機は脱したものの、その後ずっと昏睡状態だったのに、まさか目覚めるとは!

その後、抑えきれない興奮を覚えた。おばあさまが来られたなら、この騒動は...収まるはずだ。

安藤吉実は江川おばあさんを見た瞬間、目を見開いた。得意げな笑みがまだ消えきらない顔は、とても滑稽に見えた。

まさかあの老いぼれが目を覚まし、こんな重要な時に駆けつけるとは...全く予想もしていなかった。

驚きに続いて、彼女を襲ったのは果てしない恐怖だった。

あの老いぼれが目覚めたということは、彼女が高橋先生を使って毒を盛ったことを知れば、絶対に許してはくれないだろう!