第363章 強烈な復帰

「多重人格は一度形成されると治療が難しく、薬物療法で症状をコントロールするしかありません。主に使用される薬物は抗うつ薬と抗不安薬で、抗うつ薬はフルボキサミン、セルトラリン、ベンラファキシンなどが主で、抗不安薬はロラゼパム、ジアゼパム、ブスピロンなどが主です。」

園田円香は背筋を伸ばし、黒い瞳で目の前の文章を何度も読み返し、指先でテーブルの上をリズミカルに軽く叩いていた。

江口侑樹を専門的な検査に連れて行くことができない以上、彼が本当に多重人格障害を患っているかどうかを、迂回的に調べるしかなかった。

つまり、彼が上記の成分を含む薬を服用して症状を抑制しているかどうかを調査することで、本当に病気なのかどうかを判断できるということだ。

園田円香は目を細めて慎重に思い出してみた。以前、江口侑樹のホテルスイートで離婚証明書を探した時、部屋中を探し回ったが、どんな薬も見つからなかった。

もしかしたら、オフィスに置いているのかもしれない?

江川グループに入社したら、彼のオフィスを探る機会を見つけなければならないようだ。

どちらにせよ、突破口が見つかったことは、出雲先生が整理してくれた資料が無駄ではなかったということだ。

園田円香は携帯を手に取り、WeChatで出雲先生に心からの感謝のメッセージを送った。

二日後、江川おばあさんから園田円香に連絡があり、すべての手配が整い、今日から江川グループに入社できると告げられた。

園田円香は家で二日間資料を読み、十分な休息も取った。首の赤い痕も大分薄くなり、化粧をする時にファンデーションで隠せば、よく見なければ分からないほどになっていた。

今日から新たな戦いが始まる。弱気になってはいけない、最高の状態で立ち向かわなければ!

江川おばあさんは運転手を付けようとしたが、園田円香は丁重に断った。

彼女は人に仕えられるような性格ではなく、むしろ落ち着かない。何でも自分でする方が慣れている。

江川おばあさんは無理強いしなかったが、すぐに車を一台贈ってきた。理由は「毎日タクシーや地下鉄で江川グループに通うわけにはいかない。副社長という立場に相応しくない」というものだった。