第365章 彼女の目の前で愛を見せつける

江口侑樹は一瞬固まり、彼女がこのような行動をとるとは思っていなかったようだった。

次の瞬間、園田円香は男に強く押しのけられた。その力は強く、円香は数歩よろめき、ソファーにしがみついてようやく立ち直った。

そして安藤吉実は悲鳴を上げた。「園田円香！」

彼女の名前を叫び、まるで彼女を骨まで砕いてしまいたいかのようだった。

円香は安藤吉実を無視し、ただ体を真っ直ぐに立て、まぶたを上げて江口侑樹を見つめ、さらに唇の端に挑発的な笑みを浮かべた。

彼女は激怒した侑樹を見ることを予想していたが、意外にも、彼の深い瞳は彼女を睨みつけ、濃い殺意の他に...どうやら戸惑いの色も見えた？

円香は自分の見間違いだと思った。江口侑樹がそんな感情を持つはずがない。彼女はもう一度よく見ようとしたが、侑樹はすでに長い脚を踏み出し、振り返り、大股で事務所を出て行った。

彼女には彼の高くて冷たい背中しか見えなかった。

円香はまた一瞬呆然とした。

江口侑樹はこれで済ませるの？彼女は、また彼が駆け寄って首を絞めに来るかと思っていたのに...

それとも、安藤吉実がここにいるから？彼の本命を慰めに行くのを急いでいるから、とりあえず彼女のことは後回しにしたの？

江口侑樹は振り返ることもなく事務所を出て行き、安藤吉実はまだその場に立ち尽くしたまま、円香を引き裂きたいという様子だった。

彼女の視線に気付き、円香はようやく注意を江口侑樹から安藤吉実へと移した。

正直に言えば、安藤吉実が意気消沈するのを見るたびに、彼女はかなり嬉しかった。

安藤吉実は円香の唇の端に浮かぶ得意げな表情を見て、さらに爆発しそうなほど怒り、目の前のこの女を憎む気持ちをもはや言葉では表現できないほどだった。

彼女の遺灰を見ても、一気に燃やしてしまいたいほどだ！

しかし皮肉なことに、目の前で円香が江口侑樹にキスをするのを見ても、非難する立場にないのだ。今の彼女には円香を責める資格が何一つないのだから！

安藤吉実は目を赤くして怒鳴った。「園田円香、どんな手を使っても、侑樹の気持ちを取り戻すことはできないわ！」

彼女が今日ここに来たのも、円香が先に江川グループの株主になり、今日は江川グループに入社したという知らせを受けて、居ても立ってもいられなくなり、すぐに駆けつけたからだった。