第372章 愛は最大の力

この考えが頭に浮かんだ瞬間、園田円香は全身の震えが止まらなくなった。彼女はこの事実を受け入れることができないようだった。

たとえ...今はただの推測であっても。

しかし、本人格の江口侑樹は確かに長い間現れていなかった...彼女は今でも、第二人格の江口侑樹がいつ現れたのか分からない。この3年の間なのか、3年前なのか、あるいは...5年前なのか？

結局、人は演技することができる。もしかしたら5年前から、第二人格の江口侑樹が演技していたのかもしれない。

彼女は今や完全に混乱し、呆然としていた。

園田円香は不安な言葉を思わず口にし、出雲先生は同情的な目で彼女を見つめた。

実は彼女が友人の話だと言った時点で、これは彼女自身の話なのだと予感していた。

今では皆「架空の友人」を作り出すことに慣れている。

しかし医師として、診療上必要な場合を除いて、他人のプライバシーを探ることはしない。

園田円香は彼の友人であり、彼は友人としての立場から、最も専門的なアドバイスを提供するつもりだった。

「園田キャスター、そんなに悲観的になる必要はありません。たとえ最初に第二人格が目覚めたとしても、それは不安定なもので、目覚めたからといって直ちに体と思考を完全に支配することはありません。それには長期的な闘争が必要です。」

「それに、意志の強い本人格はそう簡単には打ち負かされません。あなたの友人も、まだ存在しているはずです。ただ閉じ込められているだけかもしれません。」

さすが心理医だけあって、感情を落ち着かせる言葉は上手く、園田円香の焦りも幾分か和らいだ。

彼女は軽く目を閉じ、深呼吸を数回して、徐々に冷静さを取り戻した。

そうだ、彼女は考えすぎていた。3年前なら可能性があるが、5年前は、せいぜい第二人格が目覚め始めた程度で、体と思考を支配していたのは、まだ本人格が主だったはずだ。

彼女は突然、以前安藤秘書が話してくれたことを思い出した。江口侑樹は定期的に安藤吉実とビデオ通話をしており、時には24時間姿を消して、誰も彼がどこに行って何をしているのか分からないことがあった。

今考えると、これらの行動は、その時期に催眠術をかけられて意思に反して行動していたか、あるいは第二人格が完全に目覚めて、第二人格の江口侑樹がしていたことだろう。