その質問は出雲先生を困らせてしまった。
彼は数秒間呆然として、苦笑いを浮かべた。「主人格だけが長期的に身体と意識を支配できるんです。時々発作が起きた時に、他の人格が現れるだけです。」
「あなたの言うようなケースは、あり得ません。」
つまり、江口侑樹についての彼女の推測は間違っていたのか?
第二人格なんて存在せず、江口侑樹はもともとそういう性格だったということ?
園田円香は少しイライラして、思わず両手で髪をかき乱した。
突然、スマートフォンがピンと鳴り、園田円香は画面を一瞥すると、新しいメールが届いていた。
送信者はジェームズ博士だった。
園田円香は気持ちを落ち着かせ、指先で画面をタップしてメールボックスを開き、新着メールを開いた。
前回、佐藤先生が園田智則をジェームズ博士のところへ連れて行って詳しい身体検査をした時の結果が出たようで、ジェームズ博士から送られてきたのは園田智則の検査報告書と分析結果だった。
最初の方にある専門的な医学用語やデータは理解できなかったので、ざっと目を通して上にスクロールした。
スクロールしていると、コーヒーを飲んでいた出雲先生が突然声を上げた。「園田キャスター、ちょっと待ってください!」
園田円香は思わず動きを止め、驚いて彼を見た。「出雲先生、何かありましたか?」
出雲先生は彼女のスマートフォンの画面を見つめながら言った。「この報告書を見せていただけませんか?」
彼は医者なので、これらの医学用語を理解できる。もしかして何か良くないことを見つけたのだろうか?
園田円香は園田智則の健康状態を最も心配していたので、すぐに何度もうなずき、スマートフォンを出雲先生の方に差し出した。「どうぞ、この報告書に何か問題があるんでしょうか?」
出雲先生はスマートフォンを受け取り、画面に目を落とし、指で何度か上にスクロールしながら、中の内容を真剣に読んでいった。
彼の表情が徐々に沈んでいくのを見て、園田円香の心も宙吊りにされたかのように、息を詰めそうになった。
彼女は出雲先生の邪魔をする勇気もなく、ただ我慢強く彼が読み終わるのを待つしかなかった。
時間が永遠のように感じられ、また一瞬のようにも感じられたが、出雲先生はついに顔を上げた。しかし、彼の表情は少し重々しかった。