第395章 悲しみ

東京の新しい大型遊園地に到着すると、園田円香は車を停め、約束した入り口まで歩いていったが、江口侑樹の姿は見当たらなかった。

彼女は携帯を取り出して時間を確認すると、ちょうど9時で、江口侑樹との約束時間も9時だった。

まさか江口侑樹が本当に彼女をドタキャンするような無粋な真似はしないだろう?

園田円香はさらに5分待ったが、まだ江口侑樹は来なかった。彼女は一声嘲笑うと、再び携帯を取り出し、彼を皮肉るメッセージを送ろうとした。

最初の一文字を入力したところで、目の端に背の高いイケメンが彼女の方へ歩いてくる姿が映った。

園田円香は心が動き、顔を上げた。

斜め前方から、黒いカジュアルなシャツとスラックスを着た男性が歩いてきた。プロポーションが抜群で、全体的にスマートで美しく、群衆の中でひときわ目を引く存在だった。

ただし...その美しい顔には表情がなく、むしろ薄い霜が降りたような冷たさで、イライラと不機嫌さを隠そうともしていなかった。

それでも、周りの女の子たちは彼を見て、一人一人が恋する乙女のような目つきになり、興奮した表情を隠せず、中には「わぁ、このお兄さんカッコイイ!!」と声を上げる子もいた。

「芸能人なのかな?」

「芸能人でもこんなにカッコよくないでしょ。あれ、どこかで見たことある気が...!」

「私も見たことある気がする。これって...江川グループの社長の江口侑樹さんじゃない?」

「そうそう、彼だわ!なんでここにいるの?」

彼が園田円香の方へ歩み寄り、彼女の前で立ち止まると、皆が納得したように頷いた。

「あぁ、江川夫人と一緒に来てたのね。」

「まさか江川社長がプライベートで奥さんと遊園地デートするなんて、もう誰が偽装愛だなんて言えるものですか!」

「羨ましすぎる!こんなにカッコよくて、お金持ちで、奥さん思いなんて、江川夫人は前世で銀河系を救ったに違いないわ!」

園田円香は目の前に立つ男を見つめ、唇の端を上げた。「あなた、来たのね。私てっきり...来る勇気がないのかと思ってたわ?」

彼女は甘く微笑んでいたが、その皮肉めいた調子は少しも減じていなかった。

江口侑樹は彼女を見下ろし、同じように唇の端を上げて反撃した。「私の行けない場所など、まだないがな!」

「それならよかった~」