約一分後、園田円香は頭を垂れ、ゆっくりと中から出てきた。
彼女は周りを見ることなく、公園の出口に向かってまっすぐ歩いていった。まるで霜に打たれた茄子のように、しおれていた。
「おい」突然、後ろから男性の声が聞こえた。
園田円香は足を止め、振り返って目を上げると、入口の大きなプラスチック人形の横に立つ男性が目に入った。
男性があまりにも美しかったため、すでに周りには女性たちが集まり、顔を赤らめながらキャッキャと彼について話し合っていた。
園田円香は驚きの色を瞳に浮かべ、少しかすれた声で「あなた...帰らなかったんですね?」と言った。
江口侑樹は彼女の目を見つめ、その少し赤くなった目元に気づくと、胸の奥が何かに突き刺されたような感覚を覚えた。
とても微かな感覚だったが、確かに感じ取れた。
本来なら帰るつもりだった。いつも通りのデートといえば、キャンドルライトディナーで適当に付き合って終わり、せいぜい山頂で夜景でも見るくらいだと思っていた。
だから園田円香からデート場所が遊園地だと聞いた時、彼は非常に不快に感じ、拒否反応を示した。
園田円香が何を企んでいるのか、見てやろうとは思った。
しかし、こんな子供じみた遊びに付き合うつもりはなかった!
だから彼女が帰れと言った時、当然帰るつもりだった。
しかし...なぜか入口で立ち止まり、振り返って彼女を一瞥した。
すると、そこに立つ彼女がとても悲しそうな様子だった。
不思議に思った。園田円香とは何度も対峙し、何度も彼女を殺しかけたことがあったが、一度も悲しそうな表情を見せたことはなかった。
今回は、ただ帰ろうとしただけなのに、こんなにも悲しそうな顔をするなんて?
全く理解できなかったが、理解できないまま、入口まで来た足が不思議と動かなくなっていた。
なんとなく...彼女をこのまま置いていけない気がした。
江口侑樹は歩み寄り、彼女の前に立つと、薄い唇を開き、少しぎこちない声で言った。「俺は約束を守る男だ。今日のデートを約束した以上、途中で投げ出したりはしない」
その言葉を聞いて、園田円香は思わず口角を上げた。「じゃあ...悪魔のカチューシャ、つけてくれる?」