すると、向こうから安藤吉実の喜びに満ちた声が聞こえてきた。「侑樹、わかってくれたのね、本当に良かった」
彼女はわかっていた。園田円香がどれだけ主人格の江口侑樹に影響を与えられたとしても、第二人格の江口侑樹にとっては、自分が一番大切な存在だということを!
園田円香など彼女の指一本にも及ばない!
安藤吉実は興奮を抑えながら続けた。「侑樹、先生が言うには、今回の催眠は非常に静かで、誰にも邪魔されない環境で行う必要があるそうよ。約一ヶ月かかるし、一度始めたら絶対に中断できないの。そうしないと、どんな結果になるか誰にもわからないから!」
「だから、この一ヶ月は先生とあなたが外界と遮断される必要があるの、いいかしら?」
一ヶ月。
江口侑樹の黒い瞳が、無意識のうちに園田円香の病室の方向を見た。
主人格が消えて、彼がただの彼になったとき、彼女はまだ「あなたが生きていて、良かった」なんて言葉を彼に言ってくれるだろうか?
しかし、これまでの二十数年間、主人格の江口侑樹として生きてきた。家族も恋人も、栄華を極めた家柄も、頂点に立つ事業も手に入れた。それで十分だろう。
残りの人生は、彼が支配する番だ。
江口侑樹は視線を戻し、唇を開いた。「わかった」
電話を切った後、男は長い足を踏み出し、毅然として病院を後にした。
…
園田円香はぼんやりとさらに十数時間眠り続け、目を開けたときには、すでに翌日の午後になっていた。
彼女はまだ少しだけ期待を抱いてベッドの横を見たが、そこには…誰もいなかった。
彼女は思わずため息をついた。
第二人格の江口侑樹は、やはりそう簡単に落ちないようだ…
少なくとも昔、彼女が主人格の江口侑樹をヒロイン救出のように助けた後、江口侑樹は病院で彼女の世話をし、彼女が目を覚ますのを待って、命の恩を体で返すと言ってくれたのに。
でもこの第二人格の江口侑樹は、あまりにも冷酷すぎる。
病室のドアが突然開いた。
あれ、もしかして彼女の予想が間違っていて、江口侑樹が戻ってきたのだろうか?
園田円香の目が輝き、急いで見向けた。
目に入ってきたのは、彼女が期待していた江口侑樹ではなく、完璧なスタイルと絶世の美貌を持つ染野早紀だった。
彼女はハイヒールを履き、颯爽とした雰囲気で入ってきた。