第426章 行きて帰らず

三十分後、車は埠頭に到着し、そこには高速ボートが停まっていた。

三人は車を降り、ボートに乗り込んだ。

運転手はボートを操縦し、大海原の中心へと疾走していき、波しぶきを立てていった。

園田円香は横目で江口侑樹を見た。彼は落ち着き払った、何気ない様子を見せていたが、彼女は内心警戒心を抱いていた。

なんだか...物事が順調すぎるような気がした。

徐々に大海原の中心に近づくと、遠くに中型のヨットが海上に浮かんでいるのが見えた。高速ボートはそれに近づき、停止した。

運転手は振り返って彼らを見て言った。「坊ちゃんはヨットの上におられます。」

言外の意味は、ここまでが彼の役目だということだった。

江口侑樹は静かに顎を上げ、園田円香の手を引いて立ち上がった。

しかし円香は沈んだ声で言った。「侑樹、罠かもしれないわ。」

子供を迎えに来させるのに、どこでもいいはずなのに、わざわざ大海原の真ん中に設定するなんて...

江口侑樹は彼女の手を握り、笑いながら言った。「大丈夫だよ。江川臨が私に約束した以上、彼は必ず実行するさ。智則はきっとヨットの上で私たちを待っているよ。」

園田円香は反論できなかった。

確かにその通りだ。たとえ前方が刃の山や火の海だとしても、智則がヨットにいるなら、どんなことがあっても上がらなければならない。

彼女は唇の端を少し曲げて、「じゃあ、上がりましょう」と言った。

江口侑樹と園田円香はヨットに乗り込み、デッキに上がった。

デッキには小さなソファが置かれており、園田円香はすぐに園田智則の小さな体がその上に横たわっているのを見つけた。彼女の呼吸は一瞬止まり、すぐに数歩駆け寄った。

見慣れた小さな顔が目に入り、園田円香の目は瞬時に赤くなった。

彼女はまだ心配していたのに、まさか...江川臨が本当に子供を返してくれるとは...

彼女はしゃがみ込み、優しく彼を呼んだ。「ねえ、智則...」

しかし何度呼びかけても、園田智則は目を覚まさず、眠り続けていた。彼女の表情が変わり、慌てて言った。「侑樹、早く見て！智則が全然反応しないの！」

彼女の声には抑えきれない動揺が含まれていた。

江口侑樹は前に出て、彼女の隣にしゃがみ、軽く彼女の肩を叩いて安心させた。「心配しないで、子供は大丈夫だよ。目が覚めれば元気になるさ。」