彼女は軽く唇を舐め、思わず尋ねた。「私が期待していた驚きですか?」
江口侑樹は軽く笑い、とても色気があり魅惑的だった。「もちろんだよ」
この誘惑に、園田円香はどうしても抵抗できなかった。彼女は承諾した。「わかりました」
「後で安藤秘書が迎えに行くよ」
「うん」
電話を切った後、園田円香は気分が良かった。
もし江口侑樹が本当に智則を見つけてくれたなら、彼女は完全に安心して彼を信じることができるだろう!
そして、智則がついに無事に戻ってくると思うと、もう後悔することは何もなかった。
…
夕方になり、安藤秘書の車がマンションの前に到着した。
園田円香は少し薄化粧をして、自分の顔色が良く見えるようにし、きれいに着飾って息子に会いに行った。
階下に降りると、安藤秘書は礼儀正しく彼女に挨拶し、気遣いよく後部座席のドアを開けた。
園田円香はお礼を言い、座った。
1時間余り後、車が止まり、安藤秘書は顔を上げて言った。「奥様、到着しました」
言い終わると、彼は先に車から降り、その後園田円香も続いて降りた。
彼女はてっきり、江口侑樹がレストランのような場所で智則と会う手配をし、一緒に食事をするのだと思っていたが、目の前に広がっていたのは海だった。
しかも、この海は彼女にとって見覚えのあるものだった。
ここはかつて江口侑樹が彼女にプロポーズした場所だった。
ここで食事をするのだろうか?
園田円香が考えている間に、安藤秘書がまた言った。「奥様、江川社長が前のビーチでお待ちです。どうぞお進みください」
彼女はすべての疑問を押し殺し、軽く頷いて、歩き始めた。
遠くから見ると、前方のビーチには白いテーブルと椅子が置かれ、その上には大きな鮮やかな赤いバラの花束が置かれていた。生き生きとして、特に目を引いた。
男性は背が高く、海に向かって立っていた。海風が吹いてきて、彼の白いシャツを膨らませ、彼の横顔の輪郭は神々しいほどだった。
園田円香の視線が彼に落ちると、思わず心の中で感嘆せずにはいられなかった。
まさに天の寵児だ。
彼女の視線に気づいたかのように、江口侑樹は顔を横に向け、深い黒い瞳が一瞬で彼女を捉えた。彼は口角を少し上げた。
わずかな笑みだったが、すでに心を奪うほどだった。