第51章:身勝手で冷酷(2)

この頃は、数年後のように老若男女が皆スマートフォンを持ち歩くような時代ではなかったが、それでも生活に余裕のある人々は携帯電話を購入していた。

田中晴人は電話をかけ、相手が出たのを確認すると、すぐに「兄さん、志雄はどうですか?」と尋ねた。

しかし相手が答える前に、「あなたたちはまだ病院に5万円の入院費を滞納していますが、いつ支払うつもりですか?支払わなければ、薬の提供を中止します!」という声が聞こえてきた。

続いて、田舎訛りの鋭い声で「強盗みたいなことをしないでください!一昨日5千円を支払ったばかりなのに、どうしてなくなったんですか?あなたたちが横領したんじゃないですか?」と怒鳴る声が聞こえた。

横領と非難された看護師は激怒して「誰が横領したって?この田舎者、でたらめを言わないでください!あなたの息子がどれだけ重傷を負ったか分かっているんですか?心臓を刺されかけて、もう少しで閻魔大王に会うところでした。部長があなたたちを気の毒に思って、いくらか費用を減免してくれたんです。そうでなければ5万円で済むと思いますか?5万円のうちまだ5千円しか支払っていないのに、よく横領なんて言えますね。もし私たちの病院に不満があるなら、転院すればいいじゃないですか。」

そこまで言って、看護師は冷笑いを浮かべながら「あ、そうでした。転院したくても、どの病院も受け入れてくれないでしょうね。だってあなたの息子さんは、Z市で最も権力のある折田坊ちゃまを怒らせたんですから!」

藤山栄子の心の中では、息子は世界で最も優秀な男性だった。

その折田坊ちゃまだって、息子には及ばないと思っていた。

藤山栄子は両手を腰に当て、威圧的に言った。「あなたたち、権力を笠に着て人をいじめる連中!知っているの?私の息子は大企業の社長の婿なのよ。待っていなさい、息子の怪我が治ったら、必ずその折田坊ちゃまに会いに行くわ。その折田坊ちゃまは私の息子の靴を舐めることになるわよ!」

藤山栄子がこのように言うのも無理はない。彼女は田舎の片隅から来た農婦に過ぎず、大都市の権力関係など全く分かっていなかった。

看護師はそれを聞いて、軽蔑的に目を回し、冷ややかに笑って「ふん、あなたの息子に能力があるなら、待ってみましょう。でも、今すぐに入院費を全額支払ってください。さもなければ、退院手続きをしていただきます。」