第61章:粥の香り2(2更)PK応援クリック求む

「おや、誰の家の朝ごはんだろう。朝早くからこんな良い香りが漂ってくるなんて」

鈴木家から数百メートル離れた田んぼでは、多くの村人が夜明け前から農作業をしていた。

三、四月は種まきの時期で、十日か二週間ほどで田植えができるようになる。そのため、田植えの時に支障が出ないよう、田んぼには十分な水を確保しておく必要があった。

朝早くから水路の水を田んぼに引き入れ、ついでに除草や土起こし、自然肥料を入れて土を肥やしていた。

「そうね、肥料を担いで運んできたばかりで臭い匂いがするのに、こんな良い香りがするなんて、不思議ね」と草田睦美が言った。

臭い匂いと良い香りが混ざり合う、何とも言えない感覚だった。

「違うわ、これは誰かの朝ごはんの匂いじゃない?」隣の田んぼで作業をしていた藤山玉枝が疑問そうに言った。「花の香りじゃないかしら?」でなければ、誰の朝ごはんがこんなに遠くまで香るというの。

「いいえ、これは間違いなく朝ごはんの匂いよ」山本高枝が言った。「お粥の香りだわ」

鈴木邸の外では、通りかかった大人も子供も鼻を鳴らして匂いを嗅ぎ、「二番目のおじさんの家で一体何を作ってるの?なんてい良い香りなんだろう」と言っていた。

「お粥の匂いがするわ!でも、お粥がこんなに香ばしいなんて。普段私はお粥が好きじゃないのに、味気ないと思ってたのに、今のお粥なら一口飲んでみたくなるわ」

「本当にお粥?違うわ、卵焼きの匂いもするわ。これもすごく良い香りね」

……

「ごくごく……」唾を飲み込む音が聞こえた。「食べたいなぁ!」

「鈴木丸助、朝ごはん食べたばかりじゃないの?」横にいた十歳くらいの子供が軽蔑した表情で言った。「もうそんなに太ってるのに、これ以上食べ続けたら、豚と何が違うの」

鈴木丸助の本名は鈴木元太で、白くて太った体型だったため、みんなから丸助と呼ばれていた。

「鈴木黒助、豚はお前の方だ」鈴木元太は怒った顔で言った。「お前は黒豚だ」

鈴木黒助と呼ばれている子供の本名は鈴木明夫で、普通の子供より肌が黒かったため、外の人から黒助と呼ばれていた。

鈴木明夫が言い返そうとした時、別の子供の鈴木勇が叫んだ。「やんちゃが来たぞ」