鈴木和弘は首を上げ、厳しく拒否して言った。「命は一つしかない。トマトはあげられない!」
「どうやら渡す気はないようだね?」安室始は意地悪く笑いながら尋ね、その後大声で叫んだ。「みんな、行くぞ!」
そして、三人が前に飛び出し、左右から鈴木和弘の肩を抱え、もう一人は彼の前に立ち、鈴木和弘を厳しく尋問しようとした。
安室始が尋ねた。「和弘、俺たちをもう仲間とも思ってないのか?こんなに美味しいトマトを、隠し持っているなんて、仲間意識が足りないぞ。」
田中やすおは頷いて言った。「そうだよ。こんなに美味しいトマトがあるなら、もっと買っておくべきだったのに。今は二つしか残ってないのに、まだ隠してるなんて、義理がないよ。」
「ところで、和弘、このトマトいったいどこで買ったの?」田中たからばやしはいつも要点を押さえていた。「今からみんなでこれを全部買いに行かない?」こんなに美味しいものなら、いくらあっても消化できるはずだ。
彼らの寮は四人だけだが、学校全体では何人いるだろうか。
一人一人、全部消化できるはずだ。
もしかしたら、また大儲けできるかもしれない。
田中たからばやしが商売人のような表情を見せるのを見て、鈴木和弘はすぐに冷水を浴びせかけた。
「諦めろよ。このトマトは、姉さんが持ってきてくれたんだ。農業科学院の友達が新品種として育てたものを、姉さんに試食用として送ってきたって聞いてる。」
この答えを聞いて、他の三人は諦めきれない様子で尋ねた。「和弘、じゃあ姉さんの友達は何個送ってきたの?高値で買わせてもらえないかな?」
この寮の中で、鈴木和弘以外の三人は生活条件が良かった。
安室始は教育局長の次男で、田中たからばやしは会社を経営する父の唯一の後継者、田中やすおは家が鉱山を持っていて、父親は鉱山で成り上がった。
彼らは本当にお金に困っていなかった。
鈴木和弘は少し考えて言った。「じゃあ、姉さんに聞いてみるよ!」
彼は姉が野菜を売りに行くと言っていたことを思い出した。
もしかしたら、この野菜を学校でも売れるかもしれない。
既に野菜を持って桃の里に戻った鈴木花和と鈴木のお母さんは、今朝売った野菜がどれほどの反響を呼んでいるのか知る由もなかった。