翌日、まだ契約を結んでいない二十三世帯のうち、さらに五世帯が契約を結ばないことを決めた。
この五世帯は山本春香に説得されたのだった。
実は、普段、この五世帯は鈴木富岳の家族とは良好な関係にあり、まさに近くにいる者は影響を受けやすいというパターンだった。
山本春香は言った。「鈴木花和は土地を借りていちごを栽培したいんでしょう?私たちも一緒に栽培できますよ。彼女は家の幼い牛の王の糞を使っていちごを栽培したいんでしょう、私たちもできますよ。彼女は皆に約束したじゃないですか、家に来て自由に糞を取っていいって。
牛の王の糞で育てた作物が、おいしくないはずがありますか?売れないはずがありますか?こう考えると、自分たちで土地を耕す方が、鈴木花和に貸すよりずっと得じゃないですか。いちご栽培で一儲けできるかもしれませんよ。」
「うん、それはいい考えだね。」
「確かに。鈴木花和がいちごを栽培するなら、私たちも一緒に栽培して、彼女の家に行って糞を取れば、栽培したいちごは必ず売れるはずよ。」
「そうね、それに鈴木花和は約束したじゃない、牛の王の糞で育てた作物は優先的に買い取ってくれるって。その時、私たちが売れないいちごがあっても、鈴木花和に売ればいいわ。」
「この考えはいいね、本当にいい!」
「でも、いちごの苗がないんだけど、どうしよう?」
「そうだね、いちごの苗は安則町どころか、安則郡全体でも…」
山本春香は言った。「苗がないなら、鈴木花和に頼めばいいじゃない。あの子は苗を注文するって言ってたでしょう?多めに注文してもらえばいいのよ。」
「それは、それはちょっとまずくないか?」誰かがこの考えを聞いて、躊躇した。
土地を貸さないだけでなく、一緒にいちごを栽培し、人の糞を取り、今度は人の苗まで欲しがる。
「何もまずいことはないわ。」山本春香は自信満々に言った。「同じ村の住民なんだから、こんな小さな頼みも断るの?それに、土地を借りる件は鈴木花和自身が言ったでしょう、貸したい人は貸せばいいし、貸したくない人は貸さなくていいって。まさか、人が自分の土地を耕したいからって、耕すなとは言えないでしょう?」
「土地を貸すか貸さないかは自由だけど、人にいちごの苗をねだるのは、やっぱりちょっと…」厚かましい人でも、そこまではできないと思う人もいた。