第194章:バックがある(2)

「あれ、八百屋の店主さんはまだ来ていないの?」

桃の里青果店の前には早くから大勢の客が集まっていた。

誰かが携帯を取り出して時間を確認し、「もう7時過ぎよ。まだ開店しないの?私は6時過ぎに来て待っているのよ。遅く来たら野菜が売り切れちゃうと思って」と言った。まさか1時間以上も待たされるとは思わなかった。

「八百屋さんって、みんな早いはずでしょう?市場の店主たちなんて、もう早くから店を開けているわよ。この暑い夏なんて、4時や5時には野菜を売り始めているのに。この店は7時過ぎてもまだ来ないなんて、怠け者すぎじゃない?」

「ふふ、昨日も鈴木社長は怠け者だって話してたわね」

「でも、怠けるだけの理由があるのよ。だって、この店の野菜がよく売れるんだもの。市場の八百屋さんで、この店ほど美味しい野菜を売っているところなんてないでしょう」