第298章：宮崎高空、山に登る（9更）

宮崎高空は出発した後、鈴木家には行かなかった。

代わりに、牛の放牧をする小さな丘に向かった。

今は夏休みだった。

牛の王の母子の世話は鈴木輝の仕事だった。

彼は朝早くから牛の王の母子を丘の草地に連れて行き、草を食べさせていた。

牛の王の母子は賢く、物分かりの良い動物だった。

草地で十分に食べ、水を飲んだ後は、木陰で休んでいた。特に強い日差しの下では、牛たちはとても怠そうに見えた。

暑い日だったが、母子は寄り添って休んでいた。

彼らはトラウマを抱えていたのだ。

以前、母牛が屠殺場に連れて行かれそうになり、母子が生き別れになりかけたことがあった。

そのため、子牛は母牛に非常に甘え、母の側にいて母の姿を見ているときだけ、安心できるのだった。

宮崎高空が丘に上がり、寄り添う二頭の牛を見たとき、目を細めた。