鈴木花和はある駅のプラットフォームに立ち、少し呆れていた。
周りには村人たちが集まり、新しく設置されたものについて議論していた。
「これは何だろう?大きな箱みたいだけど、中に人が乗れそうだね。」
「そうだね、この大きな箱の上にワイヤーが付いているけど。これは一体何なんだろう?」
「あっ、分かった!」突然誰かが叫んだ。「これが何か分かったぞ。ロープウェイだ、そう、ロープウェイだよ。テレビで見たことがある。」
「ああ、ロープウェイか。言われてみれば、本当にそうだね。」他の人も思い出した。
桃の里は以前は貧しかったが、家にテレビやバイクがある家庭は少なくなかった。
多くのものについて、彼らはテレビを通じて知識を得ていた。
その通り、村人たちが取り囲んで議論しているものは、観光地にあるようなロープウェイだった。
鈴木花和も、いつ設置されたのか分からなかった。
ただ今朝、宮崎高空が彼女をこの場所に連れてきて、「これからは山に登りたい時は自由に登れるよ。このロープウェイは全ての山頂まで通じているから、どの山に行きたいか、好きな所に行けるよ。」と言った。
これで、山麓から山頂まで、様々な危険に遭遇する心配はなくなった。
男として、鈴木花和が妊娠しているからといって、あれこれと制限するのは良くないと分かっていた。それは反感を買うだけだった。
夜、木野元彦と電話でこの件について話した時、木野元彦が彼にアドバイスをした。
山に登るのが危険なら、歩いて登らなければいい。
歩いて登らないなら、ロープウェイがあるじゃないか。
彼は興奮して、すぐに木野元彦に人を手配させ、高額を払って一晩でロープウェイを設置させた。
宮崎高空は説明した。「このロープウェイのルートは、中腹にも停車場があり、山頂まで行けて、各山頂に駅があります。」
宮崎高空のその言葉を聞いて、鈴木花和は思わず口角を引きつらせた。
お金があれば何でもできるものだ。
普通なら、こんな大規模なロープウェイの設置は、何らかの騒ぎを起こすはずだ。
しかし、宮崎高空は音もなく設置を完了させた。
これにはどれだけの人手と資材が必要だったことか。
鈴木のお父さんと鈴木のお母さんは、この突然現れたロープウェイを見て、明らかに興奮し、表情は喜びに満ちていた。