第493章:温馨 (一更)

以前、河野並木は争わず奪わず、河野家の家督権は、欲しい者が持っていけばいいと思っていた。

しかし、この争わず奪わずの結果、権力を持つ者が彼を傷つけ続け、今では彼の好きな人まで傷つけようとしている。

今や彼には守るべき人がいる。だから、河野家の権利は彼のものにすると決めた。

……

河野家は二家の婚約解消を宣言し、その理由が秦野家の面目を大きく失墜させた。

「くそっ!」秦野興太は家で頭から煙を出すほど怒っていた。「河野安元に河野並木、あの祖父と孫は本当に人を馬鹿にしすぎる!」

婚約解消の理由は事実だったが、その理由が広まれば、帝都の社交界の全ての人から嘲笑されることになる。

以前は皆、陰で嘲笑い皮肉っていただけだが、今では堂々と笑いものにされている。

帝都の社交界の人々は皆知っている、おそらく秦野朱音はもう嫁げないだろうと。