高級車が前方に消えるまで、見物人の若者が携帯で検索した内容を見ながら言った。「さっきのおばあさんを送り届けた車の車種、知ってる?」
「知らないよ」
「シルベ」
シルベ?
シルベってどんな車?
彼らはベンツやBMW、アウディが高級車だということしか知らなかった。
もしかしてあのおばあさんを送り届けた車は、高級車でもなんでもなかったのか?
若者は続けて言った。「さっきのシルベは世界限定10台で、価格は1億円」
1億円!
おばあさんの身分が並ではないことは分かっていたが、まさか車1台が1億円もするとは思わなかった。
おばあさんの身分は相当なものに違いない。
こんな権力者と繋がりができれば、三代先まで楽に暮らせるのに。そう思うと、皆は先ほどおばあさんを助けなかったことを後悔した。特に最初におばあさんが転んでいるのを見つけた若者は。
天から降ってきた富を自分で断ち切ってしまったのだ。
その時の彼は、自分の頬を叩きたい気持ちでいっぱいだった。
......
「蒼井さん」今日蒼井華和が再診に来ることを知り、藤原宙は早くから入り口で待っていた。
「藤原さん」
藤原宙は蒼井華和の後ろについて歩き、眉目に敬意を込めながら続けた。「蒼井さん、この数日間眠れないんです。迎子の診察が終わったら、私も診ていただけませんか?」
蒼井華和は顔を上げて彼を見た。
藤原宙は顔色が黄ばみ、目にも濁りがあり、話す時の舌苔が白く、気虚湿熱の症状を示していた。
「めまいがして、食欲もないでしょう?」蒼井華和は続けて尋ねた。「朝晩に痰の出る咳も?」
「はい、その通りです」藤原宙は即座に頷いた。
蒼井華和は本当にすごい!
一目見ただけで全ての症状が分かるなんて。
さすが名医だ。
蒼井華和は続けて言った。「大したことはありません。帰ったら冬瓜とハトムギを入れたウナギのスープを毎晩飲んでください。三日続ければ症状は改善されるはずです」
「薬は要らないんですか?」藤原宙は少し疑問に思った。
病院で処方された西洋薬を飲んでも効果がなかったのに、ウナギのスープだけで解決できるのだろうか?
蒼井華和は微笑んで、「薬には毒がある。私の言う方法を試してみてください」
「はい!」藤原宙は頷いた。
話しているうちに、二人は上條迎子の部屋に着いた。