029:静園さん:彼女ではない。

このアカウントは新規登録されたものだ。

アカウント登録からLWの公式サイトをハッキングするまで、全過程は30分もかからなかった。一連の流れは滑らかで、LWの千人規模のチームは彼女の前では、まるで飾りのようなものだった。

見覚えがある。

とても見覚えがある。

この手口。

彼女以外に、如月廷真には誰がこんな腕前を持っているのか、想像もつかなかった!

「三兄さん、何を考えているんですか?」そのとき、耳元に若松峰也の声が聞こえた。

「なんでもない。」如月廷真はマウスから手を離した。

若松峰也は続けて言った:「三兄さん、お祝いに一杯飲みに行きませんか?」

そのとき。

如月廷真の携帯が鳴った。

メッセージの内容は分からなかったが、携帯を見た後、如月廷真の表情が変わり、若松峰也を見上げて言った、「準備して、清水村に行く。」

「今ですか?」若松峰也は少し驚いた。

「ああ。」

若松峰也は続けて言った:「三兄さん、もう9時ですよ。何か急用でもあるんですか?」

清水村は河内市から700キロ以上離れている。

車で行くと7、8時間かかる。

これは最近、如月廷真が清水村に行くのは3回目だった。

その理由について、若松峰也も分からなかった。

「ああ、急用だ。」

それを聞いて、若松峰也はすぐに言った:「では運転手に準備させます。」

「頼む。」

若松峰也は電話で運転手を手配した。

10分後、運転手は車をマンションの入り口に停めた。

若松峰也は如月廷真の車椅子を押して階下へ向かった。

車に乗った後、若松峰也は尋ねた:「三兄さん、今回も山頂の道院に行くんですか?」

夜中に山登りは少し無理があるんじゃないか?

「村の病院だ。」

如月廷真が答えた。

村の病院?

「清水村の村立病院ですか?」若松峰也は尋ねた。

「ああ。」

それを聞いて、若松峰也はもう何も聞かず、運転手に清水村の村立病院へ向かうよう指示した。

午前4時。

車は清水村の村立病院に到着した。

車が停まるや否や、それまで目を閉じて休んでいた男は精緻な切れ長の目を開け、窓の外を見た。その深い瞳は黒く沈んでいた。

若松峰也は助手席でいびきをかいて眠っていた。