その言葉を聞いて、藤原琳の表情が一気に生き生きとし、執事を見つめて言った。「早く!蒼井さんをお通しして!」
来た。
蒼井華和がついに来た。
彼女は蒼井華和が逃げ出すはずがないと分かっていた。
この瞬間、藤原琳の興奮した気持ちは言葉では表せないほどだった。
上條迎子は幻聴かと思い、泣くのを止めて玄関の方を見た。
次の瞬間、細い影が外から入ってきた。
彼女は長い髪を肩に垂らし、化粧っ気のない素顔なのに、息を呑むほどの美しさだった。
「蒼井さん」
上條迎子が声を上げた。
蒼井華和は医療バッグを持って、優雅に歩み寄り、「申し訳ありません。道中で少しトラブルがあり、お待たせしてしまいました」
藤原奥さんも振り向いて見た。
その瞬間、彼女は呆然として、ある詩を思い出した。
北方に佳人あり、絶世にして独り立つ。一顧して人の城を傾け、再顧して人の国を傾く。