060:腹黒すぎる

「行こう」

その時、如月廷真が突然口を開いた。

若松峰也が尋ねた。「どこに行くんだ?」

「猫を探しに」如月廷真が答えた。

若松峰也は「......」

一瞬、彼は如月廷真が冗談を言っているのか、本気なのか区別がつかなかった。

土曜日、ショッピングモールは人でごった返していた。

如月廷真は192センチの長身で、本当に背が高く脚が長く、さらに国を傾けるほどの美貌の持ち主で、威厳があり、群衆の中を歩くと、現代の若手俳優たちを何倍も上回る存在感を放ち、通り過ぎる人々が振り返って見つめるほどだった。

蒼井真緒も友人の守谷朝乃とショッピングモールに来ていた。

前方の人混みの中で、守谷朝乃が何かを見つけたようで、群衆の中のある人影を指さして言った。「真緒、あそこを見て」

蒼井真緒が顔を上げると、すらりとした背の高い人影が目に入った。

美しい玉のような姿。

自分の条件は置いておいても、如月廷真は確かに人の心臓を乱すような顔立ちをしていた。

残念ながら。

顔が良いだけで何になるというのか?

如月廷真のような人間は、永遠にただの無能者でしかない。

蒼井真緒は視線を外し、眉をひそめた。「どうしてここまで来たの?」

守谷朝乃が言った。「こういう人はヒキガエルが白鳥の肉を食べたがるようなものよ!真緒、無視しましょう、行きましょう」

「うん」蒼井真緒は頷き、守谷朝乃の後を追った。

相手にできないなら、避ければいい。

如月廷真のような人間には、一切の希望を与えてはいけない。そうでなければ、しつこく付きまとわれることになる。

しばらくして守谷朝乃が振り返り、眉をひそめて言った。「どうして私たちを追いかけてくるの?」

その言葉を聞いて、蒼井真緒も振り返った。

確かに如月廷真が後を追ってきていた。

世の中にどうしてこんな人間がいるのだろう。

無能者でも、恥を知るべきではないか!

守谷朝乃も吐き気を覚え、蒼井真緒を見て言った。「真緒、ここで待っていて。私が彼らにはっきり言ってくる」

蒼井真緒は頷いた。

守谷朝乃はすぐに如月廷真の前に立ちはだかった。「如月三男坊」

如月廷真は彼女を横目で見た。

守谷朝乃は続けた。「私は真緒の親友です。守谷と申します」

来意が善意でないことを察し、若松峰也は如月廷真の前に立ちはだかった。「何か用か?」