「蒼井さんの本名は蒼井華和です」と藤原琳は言った。
蒼井華和?
これを聞いて、結城大奥様は呆然としてしまった。
周防鳳雅も呆然としていた。
ど、どうして蒼井華和なの!
二人の様子がおかしいのを見て、藤原琳も何かを察したようで、続けて尋ねた。「あなたたちが探していた蒼井さんは何という名前ですか?」
周防鳳雅は答えた。「蒼井真緒です」
「蒼井真緒?」藤原琳は眉をひそめた。
周防鳳雅は頷いた。
藤原琳は続けて言った。「詩瑶の具合が一向に良くならないのも、人違いだったからですね」
誰が想像できただろうか、結城家が探していた蒼井さんと、彼女が言っていた蒼井さんは全く別人だったとは。
ここまで話して、藤原琳は悔しそうな表情を浮かべた。「私が悪いんです。全て私の責任です!きちんと説明しなかった私が悪いんです!」
もし当時、彼女たちの間できちんと話が通じていれば、今このような事態にはならなかったはずだ。
結城大奥様は藤原琳の手を掴んで、「上條奥さま、どうか本物の蒼井さんと連絡を取っていただけませんか!」
藤原琳は携帯を取り出した。「ご心配なく、今すぐ連絡を取ります」
「はい」結城大奥様は頷いた。
藤原琳からの電話を受けた時、蒼井華和は下校途中だった。「住所を送ってください」
電話を切ると、藤原琳はすぐに結城家の住所を蒼井華和に送信した。
結城大奥様は焦りながら尋ねた。「どうですか、蒼井さんは来てくれますか?」
藤原琳は答えた。「蒼井さんはすぐに来ると言っています」
この言葉を聞いて、結城大奥様はほっと息をつき、両手を合わせた。「仏様、ありがとうございます」
傍らの周防鳳雅は涙を堪えきれなかった。
母親である自分の過ちで、結城詩瑶にあんなに苦しい思いをさせてしまった。
今になって、蒼井真緒の態度がおかしかった時に、藤原琳と確認しなかったことを後悔している。
もし確認していれば、結城詩瑶は今のような状態にはならなかったはずだ。
「お母様、これは全て私の責任です。母親としての務めを果たせませんでした」周防鳳雅は今、深く自責の念に駆られていた。
結城大奥様はため息をついた。