053:恥を晒す

「蒼井さんの本名は蒼井華和です」と藤原琳は言った。

蒼井華和?

これを聞いて、結城大奥様は呆然としてしまった。

周防鳳雅も呆然としていた。

ど、どうして蒼井華和なの!

二人の様子がおかしいのを見て、藤原琳も何かを察したようで、続けて尋ねた。「あなたたちが探していた蒼井さんは何という名前ですか?」

周防鳳雅は答えた。「蒼井真緒です」

「蒼井真緒?」藤原琳は眉をひそめた。

周防鳳雅は頷いた。

藤原琳は続けて言った。「詩瑶の具合が一向に良くならないのも、人違いだったからですね」

誰が想像できただろうか、結城家が探していた蒼井さんと、彼女が言っていた蒼井さんは全く別人だったとは。

ここまで話して、藤原琳は悔しそうな表情を浮かべた。「私が悪いんです。全て私の責任です!きちんと説明しなかった私が悪いんです!」

もし当時、彼女たちの間できちんと話が通じていれば、今このような事態にはならなかったはずだ。

結城大奥様は藤原琳の手を掴んで、「上條奥さま、どうか本物の蒼井さんと連絡を取っていただけませんか!」

藤原琳は携帯を取り出した。「ご心配なく、今すぐ連絡を取ります」

「はい」結城大奥様は頷いた。

藤原琳からの電話を受けた時、蒼井華和は下校途中だった。「住所を送ってください」

電話を切ると、藤原琳はすぐに結城家の住所を蒼井華和に送信した。

結城大奥様は焦りながら尋ねた。「どうですか、蒼井さんは来てくれますか?」

藤原琳は答えた。「蒼井さんはすぐに来ると言っています」

この言葉を聞いて、結城大奥様はほっと息をつき、両手を合わせた。「仏様、ありがとうございます」

傍らの周防鳳雅は涙を堪えきれなかった。

母親である自分の過ちで、結城詩瑶にあんなに苦しい思いをさせてしまった。

今になって、蒼井真緒の態度がおかしかった時に、藤原琳と確認しなかったことを後悔している。

もし確認していれば、結城詩瑶は今のような状態にはならなかったはずだ。

「お母様、これは全て私の責任です。母親としての務めを果たせませんでした」周防鳳雅は今、深く自責の念に駆られていた。

結城大奥様はため息をついた。