066:河内市へ向かう

周防稔真は朝倉俊真の言う友人にそれほど期待を抱いていなかった。

結局のところ、朝倉俊真自身もかなりの実力者なのに解決できない問題を、彼の友人が解決できるはずがないと思ったからだ。

ハッカー界では、同じレベルの実力者同士でしか友人になれないものだ。

佐藤みるくのような大物は、また別の交友関係を持っているはずだ。

周防稔真が佐藤みるくの連絡先を探し回っているとき、突然会社から電話がかかってきた。

朝倉俊真はまだ呆然としていた。「先、先輩、全ての問題が解決したんですか?」

「ああ!」周防稔真は続けた。「俊真、もう話す時間がないんだ。会議の時間が迫ってるから、後で君の友達のアカウントを送ってくれ。」

「はい。」

電話を切った後も、朝倉俊真は呆然としたままだった。

「どうだ?俺の師匠すごいだろう?」高城大樹が近づいてきて、朝倉俊真の肩を抱いた。

「すごいです!」朝倉俊真は頷いた。

高城大樹は得意げな表情を浮かべた。「だから言っただろう?俺の師匠は超すごいって。今なら信じられるだろう?」

「はい、信じます。」朝倉俊真は再び頷いた。

彼はまだ呆然とした状態のままだった。

蒼井華和がどのように操作したのか見る間もなく、全ての問題が解決されていた。

これが噂の大物の手腕というものなのか?

そのとき、朝倉俊真は何かを思い出したように言った。「あの、大、大神様、振込先の口座を教えてください。」

知らず知らずのうちに、朝倉俊真の蒼井華和に対する呼び方は「蒼井さん」から「大神様」に変わっていた。

「ああ。」蒼井華和はスマートフォンを取り出した。「LINEを交換しましょう。後で送ります。」

LINE交換。

大神様から自らLINE交換を申し出られるなんて!

幸せが突然訪れすぎた。

朝倉俊真は即座にスマートフォンを取り出した。「大神様、僕がQRコードを読み取ります!」

その素早さといったら、次の瞬間に蒼井華和が気が変わってしまうのを恐れているかのようだった。

だって、これは本物の大神様なのだから。

ピッ。

朝倉俊真はQRコードを読み取った。

蒼井華和のLINE名は彼女の名前のイニシャルだった。

SH。

アイコンもとてもシンプルで、ぽっちゃりした猫だった。

朝倉俊真は真剣に名前を登録した。

大神様。