若松満志は今、とても怒っていた。
若松峰也がこうなることが分かっていたら、あの時すぐに堕ろすべきだった。
ろくでなしめ。
若松岳登の指一本にも及ばない。
若松満志は月島紅香と結婚したことさえ後悔し始めていた。
月島家の遺伝子が悪いせいで、若松峰也が今のような人間になってしまったのだ。
月島紅香は若松峰也の手をしっかりと握り、「峰也、早くお父さんに謝りなさい」
「僕は悪くない」
月島紅香はため息をつき、若松満志を見つめた。「あなたも少し黙っていて」
そう言って、若松峰也の方を向いた。「峰也、お母さんと部屋に戻りましょう」
この状況では、父子の対立をこれ以上続けさせるわけにはいかなかった。
その様子を見て、若松岳登はすぐに若松満志を支えた。「お父さん、医者が言ってたでしょう。今は怒ってはいけないって」
若松満志は深いため息をついた。
彼も怒りたくはなかった。
しかし、不孝な息子を持ってしまったのだ。
「兄さんが会社に入りたくないなら、無理強いしないでください」ここで若松岳登は一旦言葉を切り、続けた。「兄さんはここ数日、朝早くから夜遅くまで何かに忙しそうです。もしかしたら、本当に自分の道を切り開けるかもしれません」
この言葉を聞いて、若松満志は思わず笑い出した。
若松峰也が?
あいつが自分の道を切り開ける?
まったくの夢物語だ。
遊び歩く以外に何ができるというのだ!
若松岳登は続けた。「少し時間をあげてください」
最後に、若松満志は長いため息をついた。「峰也がお前の半分でも経営の才能があれば、心配することもないんだがな。岳登、これからの若松家グループはお前に任せるぞ!」
若松岳登は目を細めた。
長年耐え忍んできて、ついにこの日が来たのだ。
二階で。
月島紅香は目を赤くして、「峰也、あなたが出て行ったら、お母さんはどうすればいいの?」
この家で、若松峰也と彼女が最も親しい間柄だった。
若松岳登は夫と他の女性との間にできた私生児に過ぎなかった。
若松峰也は月島紅香を見つめた。「母さん、ごめんなさい」
月島紅香は若松峰也の手を握った。「お母さんにお願いがあるの」