085:一般人の手口

篠崎月蓉が話し終わらないうちに、「三弟、お腹が空いてない?義姉さんが厨房に何か作らせようか?」と言った。

その様子は、とても親しげで、知らない人が見たら、なんて良い義姉さんだろうと思うほどだった。

実際には、篠崎月蓉は普段、如月廷真を空気のように扱っていた。

まともに目を合わせることすらなかった。

彼女の突然の態度の変化に、周りの使用人たちは呆気にとられた。みんな、天変地異でも起きたのかと思った。

如月廷真は篠崎月蓉を見て、「二嫂、用件があるなら言ってください」と言った。

それを聞いて、篠崎月蓉は干笑いを二つほど漏らし、「三弟、そんな言い方しないで。私に何か用事があるわけないでしょう?ただ心配しているだけよ」と言った。

如月廷真は無駄話をせず、階段を上がり始めた。