もちろん妖怪市場でも掘り出し物は見つかるもので、以前誰かが200元で2000万元相当の骨董品を手に入れたことがあるそうだ。
妖怪市場は夕方6時から始まる。
この時間帯には人がだいぶ集まっていた。
露天商たちは路上に座り込み、傍らには暗めの小さな夜灯を置いていた。この光景は、ちらちらと揺れる灯りのせいで確かに少し不気味だった。
蒼井華和も焦らず、歩いては立ち止まりを繰り返し、最後にある露店の前で足を止め、古びた本を手に取った。
表紙には複雑な文字が書かれていた。
蒼井華和がその本を手に取るのを見て、店主は顔を上げて物憂げに彼女を一瞥し、説明した。「これは年代物の医学書だそうで、収集価値が高いんだ。お嬢さん、あなたとの縁があるようだから、500元でいいよ」
「500元?」蒼井華和は少し眉を上げた。
「ええ」店主は頷いた。
「いいですよ」蒼井華和は本を手に取り、「WeChatで支払います」
店主は少し驚いた。自分が適当に言った値段で、こんなにすんなり取引が成立するとは思っていなかった。
このお嬢さんは見た目はいいのに、なんて間抜けなんだ!
店主は蒼井華和を見て、続けて尋ねた。「お嬢さん、妖怪市場では売買成立後の返品は不可というルールを知ってるよね?」
「知ってます」蒼井華和は軽く頷いた。
「それならいい」店主はWeChatのQRコードを取り出した。「読み取ってください」
蒼井華和はQRコードを読み取った。
支払い完了の通知音が鳴っても、店主はまだ納得がいかない様子で、「お嬢さん、これで取引は成立したからね。家に帰ってからお母さんを連れて来て泣きつくようなことはしないでくれよ」
最近の若者はよくそういうことをする。店主は経験したことはないが、ニュースで見たことがあった。
「ご心配なく」言い終わると、蒼井華和は本を持って立ち去った。
店主は彼女の後ろ姿を見て、呆れて首を振った。
最近の若者は本当に分かっていない。500元も出して古本を買うなんて。自分の子供だったら、足の骨を折るほど叩きのめしてやるところだ!
蒼井華和は本を持って帰った。
玄関に着いた時、背後から清らかな女性の声が聞こえた。「華和!」
蒼井華和が振り返ると、笑顔で言った。「司緒」
この頃、朝比奈瑠璃は暇があれば蒼井華和に勉強を教わっていた。